台東区は、検査依頼から検査までの流れが非常にスムーズになってきている。第2波への備えが十分だとは言いがたいものの検査までのハードルは確実に低くなってきている。
逆説的だが、実はPCR検査にそれほど固執していない。PCRはあくまで補助的な検査という位置付けだ。症例経験を積めば、重症化が懸念される患者を見極めることができる。PCR未検査の外来患者であっても、発熱患者の8割は何らかの感染症だから、自己隔離や安静は必要だ。インフルエンザ患者を含め、どこもそうしてきたはずだ。
通常業務とは別に、軽症者が隔離入所しているホテル業務にも有志で参加した。5月30日勤務当日、患者は9人のみだった。経験数としては少ないが「外来で診ることができる」という確信を得るには十分だった。
発熱患者を診療した翌日に必ずフォローの電話をしている。これだけで患者さんはかなり安心する。「安心」は自然治癒を促す。コロナ関連の情報蔓延で、みな想像以上に疲弊している。「診てもらう」ことによる安心感の効能は想像以上に大きい。「エビデンス」で表すことのできない医療が存在することは臨床医ならみな心当たりがあるはずだ。
町医者がコロナ患者を診察するのは十分可能
不安を払拭できるよう、繰り返し科学的な説明をし、理解してもらうしかない。少人数の患者向け勉強会も開催している。所内で明るい雰囲気を作ることも大切だ。毎朝のミーティングでスタッフ一同、考えを確認・共有している。地道な努力が奏功したのか、患者さんからPPE物資や防護用パーティションをたくさん寄贈してもらった。幸い、それほど患者も減ることがなく、ここまで来ている。
以上の経験から「町医者がコロナ患者を診療することは十分可能である」と考える。スタッフ全員、感染制御のスキルも確実に向上している。ゾーニングもPPEも工夫次第だ。当院も、ずっと過渡期だ。コロナでない発熱患者の治療機会を逸することも避けなければならない。医師が及び腰になり、臨床経験を積まないことこそ、社会的損失だ。病初期に診療をしなければ、有効薬の投与開始も遅れることになる。
全国の町医者が尽力すれば、入院患者を減らすことはできるはずだと確信している。
院内感染は、コロナ感染患者受け入れによるほかの患者への感染が問題だと考えられがちだが、それは必ずしも事実ではない。感染者とわかっていれば、隔離すればいいだけだ。
問題は「後ろから撃たれる」ケース、つまり、無症候性感染者からの感染だ。無症候性感染者が低免疫患者に感染させてしまうのだ。
医療従事者の感染もかなり確認されている。日経ヘルスケアの調査では5月27日時点で判明しているPCR陽性者は、医師155人以上、看護師520人以上だった。スタッフに端を発し、院内感染を起こしているケースの報告も少なくない。
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