コロナ「第2波」絶対来る前提で欠かせない備え 町医者の機能拡大と検査の集中・選択が必須だ

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検査キャパはどれくらい拡大したらいいか。最低1日に40万件処理する能力を期待する。医療・介護従事者を合計すると約400万人だ。そのうち、実働人数は7割程度の280万人。毎週検査すれば、1日当たり40万件という試算だ。検査精度の問題は、定期検査で補えるはずだ。

例えば、「6月15日陰性、22日陰性、29日陰性」と書かれたプレートをスタッフが首にぶら下げる。これだけで患者もスタッフも安心できる。検査の間隔は、感染の趨勢に応じて変えればいい。

検査コストの問題は需要増が解決するはずだ。感染者だけにフォーカスした検査であれば、感染者数が減れば、無駄になってしまう。今後「ウィズコロナ」としてやっていくなら、検査がカジュアルになる必要がある。そして、非常に由々しき問題だが、コロナに感染することが犯罪者のように扱われ、医療従事者が不当に差別される風潮がある。これも、検査がカジュアルになることで緩和されていくはずだ。

第2波に備えた態勢整備が急務だ

エボラ出血熱が世界的な大流行である「パンデミック」になる可能性は極めて低い。なぜなら、ローカルの段階で患者が死んでしまうからだ。逆に言うと、パンデミックになるのは「元気な運び屋」がいるからなのだ。パンデミックが想定された段階で、市中感染より、院内・高齢者施設内感染にこそ、対策を強化するのが望ましかった。院内・施設内感染はまだ制御しきれていない。第2波に備えて直ちに体制を整えたほうがいい。

目の前の患者を無症候性感染者として、持続可能な感染制御をしつつ、できる限りコロナ感染疑いの患者を診療する。それが町医者に課された第2波への使命だ。

PCR検査は「体温計による検温」と同じような位置付けにしたほうが望ましい。これは決して荒唐無稽な話ではない。アメリカ・ニューヨーク州は介護施設の職員に対し、週2回のPCR検査を義務付けた。中国・武漢では、最大1日147万件PCR検査を行った。中国の友人の話では、北京では3000~4000円で希望者全員検査してもらえるそうだ。この価格なら自費による隔週検査も現実的だ。

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また、ノーベル経済学賞受賞者のポール・ローマー氏は1日2000万件のPCR検査が必要だと試算している。実現性はともかく、健常人を対象に検査をガンガンやって、経済活動に寄与してもらおうという意図だろう。

たとえ、ウイルスが凶暴化しようと、町医者の機能を拡大し、PCR検査を「体温計」レベルの当たり前な検査にすることで乗り越えられるはずだ。もはや体温計がない施設は考えられないはずだ。

もちろん、さらに簡易で安価で精度の高い検査法の開発が望まれるのは言うまでもない。時間の経過とともに問題は解決されていくことは、過去の発明品すべてに共通することである。

原田 文植 医師・医学博士、福島県立医科大学 災害支援講座 助教

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はらだ ふみうえ / Fumiue Harada

1971年、大阪生まれ。福島県立医科大学 災害支援講座 助教。医師・医学博士。内科認定医。認定産業医。スポーツ健康医。在宅医療認定医。1998年大阪医科大学卒業。2005年大学院終了。国立感染症研究所研究員にてフラビウイルスの研究に従事。2008年より地域医療に従事し、診療所で発熱外来なども積極的に導入。執筆活動、武道家・格闘家との交流、映画出演、都内を中心に音楽ライブ活動など幅広く活躍。

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