医療崩壊させないためには、重症入院患者を減らすことと、院内・施設内感染を防ぐことが必須だ。
入院患者を減らすためには、患者を重症化させないことが必要だ。この役割は町医者が担うことになる。院内・施設内感染の制御は、「診断」と「隔離」に尽きる。これは教科書的常識だ。
コロナ診断で現在最も優れている検査はPCRだ。だから、症状があり、感染が疑われる患者には当然PCR検査が行われる。
日本のPCR検査数は10万人当たり190件である(5月時点)。イタリアは同3000件以上、韓国の同1200件に比して圧倒的に少ない。入院患者が増えて医療崩壊につながったり、検査技師の被曝の危険性が懸念されたりなど、さまざまな否定論が飛び交った。政府による検査拡大の号令後も、それほど検査数は増えていない。
PCR検査拡大に対して否定派の意見も承知のうえで言えば、私は「第2波」到来に備えて、PCR検査能力を格段に増やす必要があると考えている。「第2波」はわれわれがこれまでに経験したウイルスより凶暴な「株」かもしれない。アジア型と欧州型で死亡率があきらかに異なっている。「第2波」を、前回同様「民度」だけで乗り越えられるかどうかは不明だ。被害を最小限にとどめるにはどうすればいいだろうか?
キーワードは「町医者の機能拡大」と「検査の選択と集中」である。
心筋梗塞の患者がコロナ陽性だったケースも
症状のない入院患者はどうするか。当院パート医師の報告によると、心筋梗塞で救急搬送された患者が、コロナ陽性だった。こういう経験を見聞すると、病院は救急患者を受け入れることを躊躇するようになる。必然的に「たらい回し」が起こる。このようなケースへの対策として、入院時すべての患者にPCR検査をすることが望ましいと考える。もちろん、胸部CTやその他の検査も併用したほうがいいだろう。多くの病院でそのような体制がすでに取られている。
感染の恐怖と戦いながら、献身的に治療に専念する医療従事者のお陰で、重症入院患者数も減り続けている。日本の死者数の少なさは、病院の医療従事者のレベルの高さに依るところが大きいことは間違いない。
「第1波」に対して町医者の現場はどうしていたのか。具体例として当院の対応をお伝えしたい。
「蔵前協立診療所」は、東京都台東区にある。患者さんの平均年齢は73歳。大半が、生活習慣病などの慢性疾患の患者さんである。常時50人ほど在宅診療もしている。
新型コロナ感染症の流行が拡大し始めた3月後半から、ゾーニング下で、新型コロナ感染が疑われる患者さんをのべ70人近く診療してきた。「やっと診てもらうことができた」と感極まる人も少なくない。PCR検査に至ったのは20人、そのうち陽性は在宅診療をしている81歳の男性だ。コロナ肺炎が疑われ、受け入れ病院が決まるまで8時間かかった。このケースは「たらい回し」として複数のメディアで取り上げられることになった。
その他、臨床所見と現病歴から、コロナによる肺炎が強く疑われた80歳男性は、入院し、「偽陰性」として対処された。1カ月ほどで退院し、現在在宅診療をしている。
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