繰り返し不況にさらされる「コロナ世代」の悲哀 就職や収入だけでなく、寿命、人生観にも影響

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経済的な挫折が個人のイデオロギーに与える影響を研究したのが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のパオラ・ジュリアーノ教授と国際通貨基金(IMF)のアントニオ・スピリンベルゴ氏だ。

両氏は総合社会動向調査の1972〜2010年データを分析し、こう結論づけた。社会心理学者が「多感な時期」と呼ぶ年齢(おおむね18〜25歳)に不況を経験した人々は、「人生の成功は努力よりも運に左右される」と考え、恵まれない人々を助けて格差を縮小する所得再分配政策を支持し、左派政党に投票する傾向が強い──。

ミレニアル世代の苦悩

失業した若年労働者のように影響をダイレクトに食らった人々の間では、こうしたイデオロギーの変化はさらに強力なものとなりうる。「原理的にいって、これは世代間の分断を引き起こす要因となる」とジュリアーノ教授は言う。

ボストンカレッジ退職研究センターのアリシア・ムネル所長とホウ・ウェンリャン研究員は、1981〜1999年に生まれ、2009年の大不況で特に深刻な影響を受けたミレニアル世代がそれまでの世代と比べ、どのような点で経済的に不安定となったかを明らかにした。ミレニアル世代は、より多額の学生ローンを抱え、貰える退職金も少ない。純資産はベビーブーム世代や1960年代前半〜70年代後半生まれのジェネレーションX(X世代)より少なく、持ち家比率も低い。結婚している人も少ない。

こうしたミレニアル世代がウォール街占拠運動を巻き起こし、サンダース上院議員を2度にわたって大統領選挙の有力候補に押し上げてきた。ニューヨーク州のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員のような候補者に投票し、民主党の左旋回に拍車をかけているのも、この世代である。

だが、各世代を結びつける重要な絆はまだ残っている。家族だ。若者は親を気にかけており、自分の親にはコロナで死んでほしくないと考えている。高齢者は子や孫の経済的な幸福を願っている。当然、自分たちの確定拠出年金(401k)も気がかりだ。経済が底割れする展開は、高齢者も望んでいない。

ジョーダン・ハガードさんの母、ブレンダ・ミシェル・ハガードさん(59歳)は大人になってからずっと、次のように考えてきた。失業などの困難に直面した人は、とにかくあきらめずにがんばって、「うまく行く方法を探せば」いいのだ、と。

 しかし、娘の世代がわずか10年あまりで経済危機に2度も直面し、何千万人という人々がほとんど一夜にして失業するのを目の当たりにして、世の中に対する見方が変わった。

「母親として思うのは、これはひどすぎるということ」と彼女は言った。「自助努力で別の道を探すにしたって、コロナがこんな状況では、限界ってものがありますよ」。

(執筆:Eduardo Porter記、David Yaffe-Bellany記者)

(C)2020 The New York Times News Services

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