繰り返し不況にさらされる「コロナ世代」の悲哀 就職や収入だけでなく、寿命、人生観にも影響
一部の若者にとっては10年と経たないうちに2度も深刻な不況にさらされたことになる。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートはこう分析した。「(リーマンショックによる)大不況の中、初めて労働市場に参入した世代は今、『一生に1度』とされる景気後退を2回も経験しつつある」。
33歳のジョーダン・ハガードさんはリーマンショック直後の2009年、深刻な不況が広がる中でオクラホマ州立大学を卒業した。採用市場は悲惨な状況で、マクドナルドの仕事に応募しても返事すらなかったという。
「私が想像してきた人生とはかなり違う」
10年後の今、ハガードさんはシアトルの小さな出版社でオフィスマネージャーとして働いている。今回のコロナ危機で同僚の何人かは一時帰休となったが、彼女自身は何とか仕事を確保できている。それでも、2009年の影響を今でも感じているという。
「シアトルで家なんて、これからも絶対に買えないだろうし、ルームメイトの1人や2人もいなければ実家から出るのだって無理」とハガードさんは言う。「私が聞かされてきた人生や、想像してきた人生とはかなり違う」。
カリフォルニア大学バークリー校のジェシー・ロススタイン教授は、2008年の金融危機後に労働市場に参入した大卒者の追跡調査を行っている。この調査によれば、2010〜11年に就職した人は18年の段階で、金融危機前に卒業した人の同年齢時に比べて有業率が低く、就業者同士の比較でも賃金が少なかった。
こうした不況の影響は長期にわたって続く可能性が高い。ロチェスター大学のリサ・B・カーン教授は、1979〜80年の不況期に大学を卒業した白人男性がその後どうなったかを調べた。その結果わかったのは、20年経っても彼らが低賃金で条件の悪い仕事から抜け出せずにいるということだった。経済が回復した後ですら、条件のいい仕事に転職するのは難しかった。
原因はさまざまのようだ。卒業が不況期と重なると就職の機会が限られ、あまり向いていない仕事でキャリアをスタートせざるをえなくなる。経済が回復して転職しようとしたとしても、今度は職歴の高い人材との競合にさらされる。さらにカーン教授の指摘によれば、不況期に社会に出た若者はリスクを避ける傾向が強まるようだ。「不況時に学校を卒業した人は、景気のいいときに学校を卒業した人ほど転職しない」(カーン教授)。ところが、転職は報酬を増やす最も効果的な手段の1つなのだ。
キャリアの滑り出しで苦戦すると、その影響は多くの場合、職業人生全体に及んだ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のティル・ヴォン・ワクター教授とノースウェスタン大学のハネス・シュワント助教授は、当時としては戦後最悪だった1981〜82年の不況期に労働市場に参入したアメリカ人を追跡調査している。