「反中国」姿勢をトランプがいきなり強めた事情 パンデミックをめぐる責任論で米中が舌戦

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中国での新型コロナの発生は、習近平国家主席にとって、新たな挑戦となった。「新型コロナウイルスが主に中国国内で猛威を振るっている限り、中国経済の成長だけを妨げ、中国政府だけが汚名を被る事態を招くこととなる。習近平中国国家主席にとっては困難が増し、悪夢のような展開が待っていた。 その間ずっと、世界経済は予想どおに飛躍し、中国から顧客を奪い、中国が長い間求めている栄光を横取りするかに見えた」。

しかし、パンデミックは中国にとって僥倖となる可能性も持っていたとリビー氏は主張する。新型コロナウイルスが蔓延すれば、中国政権内部の悩みは拡散し、また一方で「新型コロナウイルス感染症で経済が弱体化した国々は、中国製品に対する依存度を高めざるを得なくなる」と説く。トランプ大統領の再選はもはや確実ではなくなり、アメリカ経済の弱体化はアメリカの国防支出に影響を与えるに違いない。

イラク戦争時と同じ「創作問題」か

リビー氏の語るところでは、習国家主席は単にチャンスを利用する以上のことを実行した。

中国政権は、故意に「数万人の旅行者を新型コロナに感染させ、中国から離れさせ、当時不用心だった国々へ送り込んだ」。そして、これはすべて、習近平国家主席の側近による、世界支配の探求の一部であると彼は結論付けている。「彼らの間では、中国の優位性を示すための情熱がたぎっている」。

リビー氏が、こうしたシナリオを描くことは、特に珍しいことではない。過去においては、イラクが大量破壊兵器を製造しており、911のテロ攻撃に関わっているという誤った主張を支持するようCIAに圧力をかけたときのチェイニー元副大統領の交渉担当者だった。

こうした主張に異議を唱えた外交官を失墜させる計画を企てたことで、リビー氏自身は2007年に偽証罪と司法妨害の有罪判決を受けている。しかし、驚く展開が待っていた。チェイニー元副大統領からの嘆願を受けてもジョージ・W・ブッシュ元大統領が拒否したにもかかわらず、リビー氏は2018年4月にトランプ大統領によって恩赦を受けている。

情報機関高官は、イラク戦争時にリビー氏が果たした役割と比較して「リビー氏の投稿には、前回と同じ創作問題を繰り返している感触と匂いがする」と話している。

「これもまた、リビーのすり替えマジックで作り上げたファンタジーだ」と、アジアで長い経験を持つ別の元情報機関高官は話す。同氏は中国の指導者たちがウイルス拡大に関心を持っていたとするリビー氏の考えも退ける。

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