「反中国」姿勢をトランプがいきなり強めた事情 パンデミックをめぐる責任論で米中が舌戦

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1月15日にトランプ大統領が中国との貿易協定に署名したときは、状況はまったく異なっていた。貿易協定は、アメリカの好景気を背景に、「アメリカ・ファースト」を掲げた大統領再選戦略の最重要項目だった。その後の2カ月間、トランプ大統領は中国と習近平国家主席に対して、新型コロナウイルスへの対処を含め、称賛を送り続けた。

だがその後、株式市場の大崩壊、のしかかる景気後退、そして新型コロナ感染率の上昇がトランプ大統領を襲った。

「新型コロナとその後の経済崩壊が彼の大統領選に大打撃となり、トランプ大統領は完全にパニックに陥った」と元オバマ政権で国家安全保障会議アジア上級部長だったジェフリー・ベイダー氏は話す。「トランプ大統領は新しい悪役を見つける必要があった。中国側のコロナの取り扱いについての一連の陰謀論を考え出す必要に迫られていた。背後には、大統領関係者によって組織された偽情報キャンペーンがある」。

情報機関にも証拠裏付けを求めている

ニューヨークタイムズ紙などによると、トランプ大統領は、アメリカの情報機関にキャンペーンを裏付ける証拠を探すよう強く求めている。この点、筆者も情報機関の高官に確認している。

「トランプ大統領が次に取った手段は、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、およびDIA(国防情報局)を含むアメリカの情報機関すべてに、中国が新型コロナウイルス感染症に責任があるかどうかを知るため、それぞれの機関が持つ情報ファイル――通信傍受、ヒューミント(諜報で得た情報)などあらゆるもの――を調べ上げることを課した」とこの高官は語る。

「この種の任務が課せられると、いきなりまことしやかな、操作され、誇張された『機密情報』とやらがいつもどこともなく出てくる」。

当局者はトランプ大統領に課せられた圧力を、イラク侵略を正当化するために、9月11日のアメリカへのテロ行為と、イラクとアルカイダ間の結び付きの証拠をCIAに対して求めた、ディック・チェイニー元副大統領の圧力と並べて語る。

「パンデミックがどのようにして生じたのかを決定することの重要性を否定することはできないが、同様にパンデミックへの対処におけるトランプ大統領の拙劣な対応やリーダーシップから人々の目先をそらす手段として、情報機関を政治的に利用しているという見方から逃れることは困難だ。もちろん、これらすべてが1つの目的、つまりトランプ大統領の再選に役立つことが意図されている」と高官は語る。

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