「反中国」姿勢をトランプがいきなり強めた事情 パンデミックをめぐる責任論で米中が舌戦

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「共産党の正当性、習国家主席の立場、そして何よりも中国の将来にとって、たとえ成長率がかなり鈍化しているとしても、持続的な成長が不可欠だ」と前情報機関高官は話す。

「その点、新型コロナの感染拡大は、中国の経済成長をさらに抑制し、中国に不利益をもたらす形でサプライチェーンの見直しを加速するだけだ。中国の指導者たちはそれを理解している」。

安倍首相が演説したハドソン研究所

中国をめぐる懸念についての発言が増える中で、ひときわ全体主義国家として、世界支配を見据えた長期計画を持っていると中国に対して悲観的な見方をしているのが、ハドソン研究所である。

トランプ大統領との近さをアピールするマイケル・ピルズベリー氏や、リビー氏などの執筆陣は、ハドソン研究所を拠点としている。2019年10月にポンペオ国務長官がそうしたように、マイク・ペンス副大統領も2018年後半にハドソン研究所で、自身の主要な中国に対する強硬政策の演説を行っている。

ハドソン研究所はまた、安倍政権がホワイトハウスに近づく必要があるときに、好んで使うチャネルとなっている。安倍晋三首相はハドソン研究所で数度公式演説を行っているが、同研究所に紹介したのは個人的な友人であるリビー氏である。安倍首相のもう1人の友人であるケネス・ワインスタイン所長は、次期駐日アメリカ大使に指名されている。

トランプ大統領の中国観は、主に貿易不均衡問題に対する執着と彼のネオ孤立主義者としての衝動から作られているようだが、ポンぺオ、ナバロ、リビー各氏の中国観は、中国に対する脅威から根付いたものだ。

「特定のイデオロギーを持つ者にとって、今回の騒動は抵抗を克服するために好都合であった」とジェフリー・ベイダー氏は話す。

「トランプ大統領は選挙戦に臨むにあたって政策が必要だったので、今の流れに乗っている。筋金入りの保守派は、大統領が選挙戦で勝てるかどうかまでは分からない。しかし、11月までにできる限り多くのことを実現しようとしている」

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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