20代でうつで酒浸りの母を介護した女性の苦悩 姉弟は手伝ってくれず、300万円の費用も負担

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1日に50回以上トイレに行くようになり、その度に水を流すため、ひと月の水道代は約7万円にも上った。不審に思った水道局員が、水漏れしていないか確認に来てくれたが、どこにも異常はなかった。

その後、失禁が増え、オムツをあてるように。しかし、オムツをしていても間に合わないほど便失禁が多く、布団のみならず、床や壁などにまでつけてしまう。そのため林田さんは、ハイハイや伝い歩きを始めたばかりの長男に触らせないように、1日中目を光らせていなければならない。

深夜の徘徊も増え、何度も警察のお世話になった。母親は家から出てしまうと1人で戻れないため、朝まで探し回ったこともあった。

「夫が家にいるときは子どもをお願いして探しに行き、いないときは抱っこして探しに行ったこともありました。長男の育児だけでいっぱいいっぱいなのに、どんどんおかしくなっていく母を目の当たりにして、正直、何度も捨てたいと思いました。私自身、精神的におかしくなっていたと思います」

その頃、林田さんは次男を妊娠していた。

どうして私だけ?

母親の介護と長男の育児のダブルケアによるストレスからか、林田さんは切迫早産になってしまう。

林田さんは母親を1人で介護をすることに限界を感じ、「このままでは私の生活が壊れてしまう!」と危機感を抱き始めた。

わらにもすがる思いで役所に相談に行くと、ケアマネジャーが付くことに。そこで初めて「認定調査」というものを知り、母親は要介護2と認定。週2回のデイサービスや、週3回のホームヘルプサービス、月2回の訪問看護、月4日のショートステイなどが費用の1割負担で利用できるようになった。

林田さんは、次男出産までの3カ月ほど、母親をショートステイに預けることにした。

そして2016年、無事次男を出産。

ところが、母親を預けていたショートステイ先から、約90万円の請求書が届く。びっくりした林田さんは、減額になる制度はないのか役所へ問い合わせたが、「ない」と言われてしまう。介護保険の利用限度額を超えてしまっていたのだった。

「当時まだ29歳だった私は、起こったことに戸惑うばかりで、事前に何をどうすればいいのか、誰に相談をすればいいのかもわからず、オロオロするばかりでした。すべてがつらく、苦しかった記憶しかありません」

2018年、林田さんは3男を出産。

さらに同じ年、脳梗塞を起こして倒れ、入院していた祖母が亡くなってしまう。

「母の介護費用と祖母の入院代、合わせると300万円以上かかりましたが、全部私の貯金から出しました。その頃、弟は奥さんの実家のほうへ移り住み、もう何年も音信不通。姉は近くに住んでいましたが、介護費用はもちろん、介護自体に何の協力もしてくれないので、『どうして私だけこんな苦労をしなくちゃならないの?』と、ずっと責め続けてきました」

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