20代でうつで酒浸りの母を介護した女性の苦悩 姉弟は手伝ってくれず、300万円の費用も負担

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林田さんの母親は、林田さんが物心ついた頃から酒浸りだった。

「母は昔からお酒が大好きで、私が幼い頃から毎日1人で晩酌をしており、飲まない日を見たことがありませんでした。母がアルコール依存症だとわかったのは15年ほど前、まだ父が健在だった頃です。突然母が歩けなくなり、病院へ連れて行って血液検査をすると、ガンマGTPが平均値の数十倍だったため、飲酒にドクターストップがかかりました。

しかし、それから何度医師に言われても、母はお酒をやめることができず、父が亡くなるとさらに飲む量が増えました」

林田さんには2歳上に姉、3歳下に弟がいるが、誰も母親に母親らしいことをしてもらった記憶がないという。母親は若い頃からうつ病を患っており、会社を経営する父親は忙しく、家事・育児は近所に住む母方の祖母がやってくれていた。

「父が肺がんの末期だとわかったときは、父の最期を家族全員で看取ろうと姉弟で協力していましたが、亡くなった後はそれぞれが自分の生活に戻ってしまったので、母は孤独を感じていたのかもしれません。父が亡くなってからお酒の量が増えたことを咎めると、いつも『私の気持ちなんて誰もわからない!』と言っていましたから……」

母親は入退院を繰り返すうちに、次第に目の焦点が合わなくなり、「病院に爆弾が仕掛けられている!」などと意味がわからないことを口走るようになっていく。入院中、病院から夜中に脱走し、警察に保護されたこともあった。

母親は「ウェルニッケ脳症」から認知症を引き起こしていた。まだ59歳だった。

姉弟会議の末に…

母親に認知症の症状が出始める少し前、突然祖母が倒れた。脳梗塞だった。救急搬送され、一命を取り留めたものの、祖母はそのまま寝たきりになってしまう。

林田さんは、姉弟会議を開いた。

当時、弟はすでに結婚しており、奥さんが1人目を妊娠中だったので、同居は難しいと主張。姉は、父が亡くなる直前まで海外留学をしていたが、父が亡くなる直前に急遽帰国。その後は彼氏と同棲を始めており、実家に同居して母親と祖母の介護をすることはできない。消去法で林田さん一家が実家で母親と同居することに決まる。

「夫は、『あおいがいいならいいよ』と受け入れてくれましたが、『仕事が忙しいからあまり協力はできないよ』とも言っていました」

飲食業に携わる夫は、多忙で不在が多い。一方で、母親は日に日におかしくなっていく。

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