20代でうつで酒浸りの母を介護した女性の苦悩 姉弟は手伝ってくれず、300万円の費用も負担

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母親の介護と3人の子育てという壮絶なダブルケアを20代で経験した女性は、どのように乗り越えたのか(写真:bee/PIXTA)  
子育てと介護が同時期に発生する状態を「ダブルケア」という。ダブルケアについて調べていると、子育てと介護の負担が、親族の中の1人に集中しているケースが散見される。
なぜそのような偏りが起きるのだろう。
連載第8回は、アルコール依存を繰り返していた母親が認知症になり、独身の姉と既婚の弟に介護を押し付けられ、実家に夫婦で移り住み、介護を始めた女性の事例から、ダブルケアを乗り越えるヒントを探ってみたい。

母親が「ウェルニッケ脳症」を発症

関東在住の林田あおいさん(仮名)は、23歳のときに父親が末期の肺がんと診断される。父親の「最後に家族で暮らしたい」という願いをかなえるため、一人暮らしをしていたアパートを引き払って実家に戻り、2011年に亡くなるまで2年ほど暮らした。

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その後、現在の夫と結婚。実家から徒歩5分くらいの場所に家を借り、結婚生活をスタート。2014年には長男を出産し、幸せな生活を送っていた。

ところが翌年のある日、林田さんが実家へ母親の様子を見に行くと、リビングで仰向けに倒れているのを発見。急いで救急車を呼び、搬送先の病院で検査を受けると、母親は「ウェルニッケ脳症」と診断された。

「ウェルニッケ脳症」とは、ビタミンB1(チアミン)の欠乏により、錯乱や眼の障害、平衡感覚の喪失を引き起こす脳疾患。アルコールの大量摂取が原因となることが多く、ビタミンB1の投与で改善されるが、治療せずにそのまま放置すると死に至ることもあり、重症になると認知症を引き起こすとも言われている。

母親はアルコール専門の閉鎖病棟へ入院し、半年ほどで退院。しかし、母親は3カ月くらいして再び倒れ、また半年ほど入院した。

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