そして、2つ目の「嫌な上司や同僚の顔を見る機会が減った」、これは3つの中で、最もメンタルコントロールに影響している部分と考えます。なぜなら、長年の相談業務の中で強く感じるのは、メンタル不調になる原因の90%が、身近な人間関係に起因するものだからです。
特に職場においては、大半を占めるのが上司との関係性です。体調不良や仕事へのモチベーションの低下、うつうつとした気分やイライラ感を訴えてくる相談者の多くは、話を突き詰めていくと上司との軋轢にたどり着くことが本当に多いのです。
誰が見てもあからさまなハラスメントがある一方で、わかりづらいハラスメントも増えていますし、馬が合わないなどの関係性もあります。日々繰り返される冷淡な態度や、突き放すような語調に接するたびに気持ちがなえるということもありますし、関係性が悪化すると、同じ部屋にいるだけで息が詰まるとか、緊張してしまうという例も少なくありません。
初歩的な状況での関係修復ができなかった場合や、明らかにハラスメントの問題がある場合、修復というよりは、できるだけ物理的な接触を減らすというのが、効果的な対応策の1つとなります。実際に、該当者が外回りに出たり、休みだったりすることで顔を合わせない日は、のびのび仕事ができると話す方も多くいます。在宅勤務になり、それと同じような環境が作られているわけです。
もちろん該当者は上司だけでなく、職場のさまざまな人間関係に及びます。嫌な人と可能な限り顔を合わせずに済むことはある意味、ストレスを最小限に抑えるのに有効に作用します。これは、職場や学校で、精神的な自分の居場所がないと少なからず感じている人ほど、顕著だと思います。オンラインツールであれば必要なときだけ連絡を取ればよく、基本的な操作や、やり取りに慣れてしまえば、快適な環境を維持するのにはもってこいとも言えます。
自己コントロールがしやすくなった
最後に自己コントロール感ですが、ある程度の就業時間や職務の量は決められていても、その中でスケジュールの自己コントロールが可能になるということです。例えば好きな音楽をかけながら事務作業を行うもよし、同じ体勢に疲れたら、床に寝そべってストレッチをしてもよいわけです。やるべきことの時間配分や感覚がつかめてきたら、自分のペースで行えるというメリットがあります。
また、周りの空気をうかがいつつ「今、話しかけてはダメかな?」と気を使うことなどが、そもそもできないわけですから、割り切ったコミュニケーションが可能になります。
人は、監視されている、やらされているという感覚を持つと意欲が下がる傾向にあります。よって、自らコントロールできる部分があるということがモチベーションを保つ1つの要因となりえます。
ツイッター社がコロナ終息後も永続的に在宅業務を認めることを示したように、今後、在宅勤務もスタンダードな働き方の1つになると、働き方の選択肢が増えてきます。不快な場所や不必要なミーティングを避けていくことも可能になり、必要以上の負担を減らせると思います。会いたい人には会えばよいわけですし、自分の価値観も含め、本当に必要か、真に大切なものを明確にしていくきっかけになると考えます。
いわば、やらざるをえない状況下でのオンラインシフトではありましたが、これを機に、働き方改革と健康経営が、企業にとっても個人にとっても本質的な能力の活用と成果、やりがいにつながることを願ってやみません。
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