もし「清少納言」が「兼好法師」と語り合ったら

同じテーマでも2人はこんなに考え方が違う

【イザ流圧倒的意訳】
オトコがオンナに対して気を使わないといけないというけど、じゃあその肝心なオンナってのはすごいかと言えば、全然逆で、もう最低で最悪、みんな性格が腐っている。我が強くて、欲も深くて、非合理的で、くだらんものにだけ飛びつく。口が達者だが、せっかく聞いてやっているのにくだらないことでも言わない、そのくせに黙っているかと思ったら、聞かれもしないことをペラペラとしゃべる。企んだり、ごまかしたりすることに関してはオトコよりも一枚も二枚も上手だけど、いざバレると気づきやしない。素直なところが一つもなく、つまらん存在、それがオンナというものだ。

綺麗なものに対する感覚は同じ

若き日々の失恋でも思い出しながら書いたのだろうか、かなり手厳しい評価となっている。『徒然草』の言葉は私たちの話している日本語に近いし、文章の構造自体も明晰でわかりやすく、『枕草子』や『源氏物語』のような難しさがない分、内容がグッさと、どストレートで心に刺さる……。

女性に対して、はっきりとした考え方がおありのようだが、思うがままに生きたい兼好法師はただのミソジニストではなかったので、(ごくたまにだが)褒めるところはきちんと褒めている。例えばこちら。

荒れたる庭の露しげきに、わざとならぬ匂ひ、しめやかにうち薫りて、忍びたる気配、いとものあはれなり。よきほどにて出で給ひぬれど、なほ事ざまの優におぼえて、物の隠れよりしばし見ゐいたるに妻戸を今少し押し開けて月見る景色なり。
【イザ流圧倒的意訳】
夜露が降りかかっている荒れた庭、お香の匂いが自然と漂い、人がひっそり暮らしているその様子は心に染みるものがある。程よい時間に誰かが出てきたが、やはりその場の雰囲気が素敵だと思われて、物に隠れてしばらくその風景を眺めていたが、妻戸を少し開けて、(その家の女性が)月を見ていた。

お出かけ先にたまたま見かけた日常の1コマ、恋人たちが別れた後の景色である。男性を見送ってからさっさと妻戸を閉め、中に入ってもよかったが、逢瀬の余韻に浸かりながら、女性は少しの間庭先で足を止め、月を見上げている。それは誰かの気を引くためのパフォーマンスではなく、自然な振る舞いであり、美しい。

「七月ばかり、いみじう暑ければ」で始まる『枕草子』という章段にも、朝方に女性が1人になった様子が描写され、誰も見ていないときの自然体で、可憐な姿が浮かび上がる。こんなに違う2人だが、綺麗なものを見た瞬間、立ち止まってしまうというのは人間だ。

耳をすませば、清少納言と兼好法師の時空を超えた会話は静かに続いている。脱線してはかぶり、論理的に進むときもあれば、いろいろなイメージが浮上しては消え去るときもある。その会話はずっと並行して完全に重なり合うことはないが、男女が互いに尊重し合い、競い合い、そして磨き合うものであるということを物語っている。

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