池上彰氏「僕はこうやって本を読んできた」 「君たちはどう生きるか」に学ぶこと
「君たちはどう生きるか」はなぜ読まれたか
現在、『君たちはどう生きるか』の漫画版と新装版に注目が集まっています。これらが売れたので、私も後追いで「別冊NHK100分de名著 読書の学校」から『君たちはどう生きるか』関連の本を出したと思われる方も多いと思いますが、そうではありません。
2017年の春、NHK出版の編集者から「中学生に読んでもらいたい本は何ですか?」と尋ねられたときに、期せずして「それは『君たちはどう生きるか』でしょう」と答えたところ、夏に私立の武蔵高等学校中学校で特別授業を行うことになり、それを本にすることにしたのです。
そうしたら、11月に出版するその2カ月前にマガジンハウスから漫画版と新装版が出て、あっという間にベストセラーになりました。つまり、「いま求められている本はこれだ」という意識がみなさんにあるからこそ、異なる出版社から『君たちはどう生きるか』の本が出されることになったのでしょう。
今回の本のシリーズタイトルには「読書の学校」とあります。講演などをした際、よく「なぜ読書が必要なのですか?」と聞かれることがありますが、第一に言えるのは、「読書は能動的な行為だ」ということです。
読書は、自分から本を手に取って、活字の文字を追っていきます。文字を追いながら、著者はここで何を言おうとしているのか、それを理解する力がついてきて、そのうえで自分から判断するようになっていきます。
小説であれば、泣いたり怒ったり、豊かな感受性を身につけることができるでしょう。また、説明的な文章であれば、物事を論理的に読み解く力や判断する力、表現する力が身につきます。そして大事なのは、そうした力を、とても安い値段と引き換えに手に入れることができる――それが読書の効用だと私は思います。
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