コロナ禍「戦争」に例えることの違和感と危うさ

封鎖措置1カ月のイタリアを見て考えた

全土封鎖から1カ月が経過しようとしているイタリアでは、さまざまな変化が起きている(写真:ロイター/CIRO DE LUCA)

イタリア全土にわたる封鎖装置の導入からいよいよ1カ月が経とうとしている。緊急事態宣言が発令されてまもなく世界を感動させた数々のフラッシュモブもほとんどなくなり、どの街も静まり返っている。

ドローンで撮影されたミラノのドゥオーモ前の広場やローマの象徴の1つであるトレヴィの泉の映像がニュースでよく流れている。普段なら観光客でごった返している有名スポットなのに、人影が見えない。ヴェネツィアの運河もボートの通りが少なくなり、数十年ぶりに魚や白鳥が姿を見せたという。自然と人間の共存について考えさせられる幻想的な風景があちらこちらに浮上している。

イタリア人のさまざまな「隔離物語」

しかし、閉ざされた窓の内側には、日常が途切られているわけではない。いうならば、「違う形の日常」が少しずつ生まれている。

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遠く離れた日本で暮らしながらも、イタリアに住む友人や親戚から届けられるさまざまな「隔離物語」を最近たくさん聞いている。一刻を争う切実な状況を語ってくれる人もいれば、笑えるエピソードを淡々と話してくれる人もいる。それぞれの話はユニークだが、さまざまなストーリーはおおよそ3つのテーマに集約されると感じている。

1つ目は、人との関係性と空間の感じ方。愛する家族と一緒にいても、24時間同じ場所で過ごすというのはたやすいことではない。子どもたちはストレスがたまり、普段でもバランスを取るのが難しい家庭内コミュニケーションがさらに複雑になる。

20世紀の代表的作家の1人として知られているヴァージニア・ウルフは、1929年に『自分ひとりの部屋』という本を出版している。前年に行われた講義を基に書かれたその本は、もし女性が小説を書くなら、自分1人の部屋と500ポンドの収入を持たなければならない、という名高いテーゼが展開されていることで有名だ。そして、彼女のその言葉は今の状況にもピッタリだとも言える。

隔離生活を乗り越えるために、1人になれるスペースも収入も必要不可欠だが、そのどちらも保証されていない人がどのくらいいるのだろうか。

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