もし「清少納言」が「兼好法師」と語り合ったら

同じテーマでも2人はこんなに考え方が違う

『枕草子』で知られる清少納言と『徒然草』の筆者、兼好法師。性別も生きた時代もまったく違う2人だが、同じテーマについて書いていることも(写真:adigosts /PIXTA)

「男は火星から、女は金星からやってきた」というのは、1990年代頃に大流行したとある啓発本の題名だ。誰しも多かれ少なかれ感じていることだが、男性と女性は根本的に違う生き物であり、お互いに多くの側面を理解できないがために、余計に苛立ち、余計に傷つき、余計に喧嘩をする。その普遍的なテーマは、われわれの日常的な悩みの種であると同時に、さまざまな時代を生きた作家たちのインスピレーションの源でもある。

自分と異なる性別を持つ主人公になり切ってみたり、自らのアイデンティティを変えてみたり、同じストーリーを複数の視点から展開させてみたり……。男女の思考回路の違いは、簡単に解明できそうな問題ではないが、興味をそそられる内容なだけに、今後も探求が続くだろう。

勃発!『枕草子』Vs. 『徒然草』

例えば、ミロラド・パヴィチ著の『風の裏側―ヘーローとレアンドロスの物語』(1991年)という不思議な仕掛けが施されている作品。両側が扉表紙になっており、女性の話、男性の話という具合に、2編の独立した物語が同じ本の中に共存している。両方のストーリーを読むと、時空の違う主人公2人の人生は、決して重なり合うことはないが、それぞれの魂が分かち難く絡み合い、呼応しあっているようなロマンチックな想像を掻き立てられる。

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マーク・トウェイン著の『アダムとイヴの日記』(1906年)という短編もそう。率直なアダムと、好奇心旺盛で感受性豊かなイヴ、同じ景色を見ているはずの2人だが、それぞれの架空の手記を通して浮かび上がる物語はまるで別物である。

こうして色々な作品に想いを馳せていると、男女の歴然とした差異が明らかに見えてくる。それが最も顕著に現れているのは、『枕草子』と『徒然草』の対立なのではないだろうか。言ってしまえば、「冷静と情熱のあいだー古典版」のようなものである。

どちらも随筆の代表作とされているものだが、2つの作品の間には300年ほどの隔たりもあり、作風や内容の違いの所以は、作者の性別だけにあるわけではもちろんない。磨き上げられた優雅な平安朝文化にどっぷり漬かった清少納言と、鎌倉幕府から室町幕府に交替するまでの、いわゆる南北朝の動乱期を体験した兼好法師、それぞれの作者の目の前に広がっていた世界は大いに異なる。

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