過去5年間で資金調達額が3倍近くに膨らんだ国内ベンチャー市場にも、コロナ不況の波が押し寄せようとしている。
調査会社INITIALによると、2019年の国内ベンチャー企業の資金調達額は4462億円と過去最高額を更新した。若い起業家が増えたことに加え、リスクマネーを供給するベンチャーキャピタル(VC)のファンドが大型化したことも大きい。ジャフコやグロービス・キャピタル・パートナーズなど、2019年は数百億円単位の大型ファンドの組成が相次いだ。
ところが新型コロナウイルスの感染拡大によって資本市場が混乱。日本やアメリカ、中国で3000億円以上のファンドを運営するVC大手「DCMベンチャーズ」の本多央輔日本代表は、「リーマンショックの時と同じく、ベンチャー企業に対する投資マネーは減っていくだろう」と指摘する。
これまでのベンチャー投資はVCに加え、事業会社やその傘下にあるコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)も有力な資金源だった。だが、「不景気になれば事業会社が最初に(ベンチャーとVC)投資から引いてくる」。国内独立系VCであるCoral Capital(コーラル・キャピタル)のジェームズ・ライニーCEOはそう話す。
投資ファンドへの逆風が吹き始めた
ここ数年、VCが大型化した背景には、年金基金や生命保険などの機関投資家が、VCを有望な投資先と考え始めたことがある。上場株式や債券よりもハイリスクだがハイリターンを見込めるオルタナティブ(代替)投資の一環だ。2018年6月に東証マザーズに上場したフリマアプリのメルカリや、同年5月に同じくマザーズに上場したネット印刷のラクスルなど、大型上場が相次ぎ、多くのVCが高倍率のリターンを出したことが大きい。
ただ現状を鑑みれば、「機関投資家はオルタナティブ投資を一定の割合に設定している。ほかの資産の価値が下落すれば、相対的にオルタナティブの比率が上がってしまい、VCなどへの新規投資を絞ろうとする」(本多氏)という可能性はある。
実際、資金調達に向けてVCなどの投資家と交渉を進めていたあるベンチャー企業の社長は、「(当社への)投資を検討していたベンチャーキャピタルから、直前になって新たなファンドが組成できなくなったので見送りたいとの連絡が入った。1社抜けると、ほかの投資家が難色を示し始める」と頭を抱える。
2019年に7号ファンド(金額未公表、数百億円規模)の資金調達を終えた国内VC大手、グローバルブレインの百合本安彦社長は、「確かに様子見のVCは多いが、まだ投資が実行されていない分の資金は潤沢にあり、そこまで悲観することもない。われわれも投資委員会を継続的に開催しているし、企業価値が妥当な会社には粛々と投資していく」と話す。
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