一方で強気なVCも少なくない。GMOインターネット傘下のVC、GMOベンチャーパートナーズは4月6日、約70億の既存ファンドの半分に当たる約35億円を「新型コロナ・リセッション投資枠」とすることを決めた。同社の宮坂友大パートナーは、「コロナの影響で不況になっても投資のペースを緩めないという姿勢を表明するため、社内で予算を確保した」と背景を説明する。
「不況下でこそイノベーティブで価値のある会社に投資する。10年ほどの長期で考えると、安値圏で株式を買っていることになる」(宮坂氏)。同社はリーマンショック後の不況の中で企業情報サービス「SPEEDA」を手掛けるユーザベースや、クラウド名刺管理のSansanに投資。当時は数億円の評価額だったが、上場後の今は両社とも時価総額が1000億円を優に超える。不況下で割安に投資すると、それだけリターンが大きいことも知っているわけだ。
成熟段階のベンチャー投資の動きも
GMOベンチャーパートナーズが投資対象としているのは、創業初期で事業の基盤を組み立てようとしている段階のベンチャー企業だ。「この段階で経営判断を一歩間違うと会社が潰れてしまうリスクがある。(だからこそ)このタイミングでの支援が必要になる」(宮坂氏)。発表後、数十社のベンチャー企業から問い合わせが来ているという。
事業基盤が確立してきて収益化が見えてきた「レイターステージ」のベンチャーへの支援の動きも出ている。グロービス・キャピタル・パートナーズは4月6日、既存投資先への追加投資という目的に絞った約40億円のファンド設立を発表。コーラル・キャピタルも4月13日、同様の目的で約27億円のファンドを立ち上げた。
「成長可能性のある会社に大型調達をしてもらって、事業を伸ばすことに集中してほしい。多額の調達をしようとすると、いろいろなファンドや事業会社から小口に集める必要があり、手間がかかる。さらにコロナの影響で調達の選択肢が減っているため、今回のような箱が重要になる。」(コーラル・キャピタルのライニーCEO)。
コロナ影響が顕在化する中で新ファンドを組成することになったが、「(機関投資家からは)われわれのファンドの実績を評価してもらっていたので、投資を渋る声はなかった」とライニー氏は言う。
コーラル・キャピタルが創業初期に投資した人事労務のクラウドサービスを手掛けるSmartHR(スマートHR)は、2019年夏に60億円超の大型調達を実施し、評価額が300億円を超えるなど大きく成長した。VCの間でも実績の差がますます顕著になりそうだ。
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