今の日本人は“情”が欠如している

山折哲雄×安西祐一郎(その2)

合掌、会釈というマナーのよさ

山折:雑談みたいな話になりますが、私は2001~2005年に国際日本文化研究センターの所長を4年間務めました。そのときに初めて経験したことですが、毎年、外国から日本の研究をしに外国人がやってくるときに、所長としてやらなければならないことは、契約書を取り交わすという仕事です。契約書を書いて取り交わして、互いにあいさつするのですが、だいたいは握手なんですよ。

安西:ああ、そうですよね。

山折:欧米社会から来る方はだいたい握手ですよね。今、中国、韓国の方もほとんど握手になりました。ところが、東南アジアやインド圏の方々は合掌なのですよ。私も寺の生まれだし、インドを研究している人間だから、それはわかっているわけですが、それでもあいさつするときに思わず右手がすっと出てしまうのです。「俺はもう日本の本来のマナーを忘れてしまったなあ」という自己嫌悪のため息が出てくるのですよね。

これはまあ冗談半分で言うのですが、たとえ握手をしても、気に食わないことがあったらすぐ左手で相手を殴ることができます。ところが合掌というのは、完全な武装解除のあり方です。そのうえ、気持ちのあり方が違うのですね。合掌も握手もしないで、ただ軽く会釈をするときもある。会釈というの、これは日本人のなかなかいい作法ですね。そういうことをあらためて70歳過ぎてから経験するとは思いませんでした(笑)。

たとえば、慶應義塾大学の入学式や卒業式のときに、正面の壇上で合掌のポーズなんてやらないですよね。

安西:やらないですね。

山折:つくづく合掌というのはいいマナーだなあと思いましたね。

(司会・構成:佐々木紀彦、撮影:今井康一)

※ 続きは4月8日(火)に掲載します

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