名画で味わう!夏目漱石のうんちく

『坊ちゃん』『三四郎』に出てくる、名画たち

美術を切り口に夏目漱石の作品を見てみよう、という「夏目漱石の美術世界展」が東京芸術大学大学美術館で開かれている。

言われてみれば、漱石の作品には絵や画家の名前がたびたび登場する。つらかったイギリス留学中は絵に癒され、帰国後は画家たちと交流し、自分でも絵筆を執っていた。展覧会を企画した東京芸術大学大学美術館の古田亮准教授は、「漱石の脳内にある古今東西の美術作品から、一部を取り出して並べた展覧会」という。

小説に出てくる絵、同時代の画家の作品、うまいとは言いがたい自身の山水画まで、漱石にちなんだ作品がエピソードとともに紹介されている。

赤シャツが野だに自慢した「ターナー」

始まりは『坊っちゃん』だ。東京から四国の旧制中学に赴任した坊っちゃんは、同じ数学教師の山嵐と組み、マドンナをめぐって職権を乱用する教頭の赤シャツと美術教師の野だいこに制裁を加える。坊ちゃんが赤シャツたちと釣りに行き、松を眺める場面がある。

「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」と赤シャツが野だにいうと、野だは「全くターナーですね。どうもあの曲り具合ったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙っていた。――『坊っちゃん』より
ジョゼフ・マロード・ウイリアム・ターナー『金枝』
1834年 油彩・カンヴァス テイト、ロンドン (C)Tate, London 2013
「ターナーの力量がわかる秀作です」と古田さん。

で、これがターナーの松である。ターナーはイギリスを代表する画家の一人。日本でも今秋から大きな展覧会が開かれるほど人気が高い。ターナーの絵を取り込むことで、漱石の小説世界は大きく膨らんだ。

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