名画で味わう!夏目漱石のうんちく 『坊ちゃん』『三四郎』に出てくる、名画たち

✎ 1〜 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 最新
拡大
縮小

『草枕』に登場する、『鶴の図』

漱石は西洋の絵画だけではなく、子供の頃には家にあった日本の書画にも親しんでいた。『草枕』には、現在も人気の高い伊藤若冲の作品が登場する。

床にかかっている若冲の鶴の図が目につく。これは商売柄だけに、部屋に這入った時、既に逸品と認めた。若冲の図は大抵精緻な彩色ものが多いが、この鶴は世間に気兼ねなしの一筆がきで、一本足ですらりと立った上に、卵形の胴がふわっと乗っかっている様子は、甚だわが意を得て、飄逸の趣は、長い嘴のさきまで籠っている。――『草枕』より
伊藤若冲『梅と鶴』江戸時代(18世紀)紙本墨画

「これも小説世界に具体的で視覚的なイメージを盛り込んでいます。漱石にとって若冲は気になる画家の一人でした。筆の赴くまま、水墨の勢いに任せて一気に描いている。若冲にはもっと派手な絵もありますが、漱石が好んだ若冲がここに集約されています」

次ページ必死感がにじみ出る?漱石自筆の絵
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT