名画で味わう!夏目漱石のうんちく

『坊ちゃん』『三四郎』に出てくる、名画たち

ヴォラプチュアス!

次の『三四郎』にも西洋の絵画が登場する。九州から上京して大学に入学した三四郎は美禰子に心を奪われ、彼女のあいまいな態度に翻弄される。三四郎が美禰子のイメージを重ねたのがフランスの画家グルーズの絵だった。

「グルーズは色っぽい少女の絵を専門に描きました。ロンドンの美術館に今もたくさん並んでいます。漱石もそれを見て感じるものがあったのでしょう。美禰子のキャラクターを作るときに思い出したのだと思います」と古田さんは語る。

ジャン=バティスト・グルーズ『少女の頭部像』
18世紀後半 油彩・カンヴァス 
ヤマザキマザック美術館
2、3日前、三四郎は美学の教師からグルーズの画を見せてもらった。そのとき、美学の教師が、この人の描いた女の肖像は、ことごとくヴォラプチュアスな表情に富んでいると説明した。
ヴォラプチュアス!池の女のこの時の眼付を掲揚するには、これより外に言葉がない。そうして正しく官能に訴えている。けれども官能の骨を透して髄に徹する訴え方である。甘いものに堪え得る程度を超えて、烈しい刺激と変ずる訴え方である。甘いといわんよりは苦痛である。卑しく媚びるのとは無論違う。見られるものの方が是非媚びたくなるほどに残酷な眼付である。――『三四郎』より

「“官能に訴えているけど卑しく媚びるのとは違う”とは、どんな感じ?と思いますよね。実際に絵を見ると、漱石はこういう絵を見てこう書いたのかと、彼の頭の中を見る楽しさがあります」と古田さん。

次ページマーメイド!
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • 今見るべきネット配信番組
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 森口将之の自動車デザイン考
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ついに上場廃止、大塚家具の末路
ついに上場廃止、大塚家具の末路
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
日本人に多い「腸を汚すフルーツの食べ方」4大NG
日本人に多い「腸を汚すフルーツの食べ方」4大NG
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
2050年の中国<br>世界の覇者か、落日の老大国か

米国と並ぶ超大国を目指す中国。しかし中国の少子高齢化はこれまでの想定を超える速さで進行しています。日本は激変する超大国とどう付き合うべきか。エマニュエル・トッド、ジャック・アタリ、大前研一ら世界の賢人10人が中国の将来を大胆予測。

東洋経済education×ICT