「山路を登りながら、こう考えた。」の書き出しで知られる『草枕』を、古田さんは何度も読み返している。漱石の芸術観が凝縮されていて、何度でも味わえる、スルメのような作品だという。
「2回目に違うものが見えてくるということは、中身があるということ。いい絵も同じで、10年後に見るとまた別のすごさが見えてくる。結局は、どれだけいろいろなものを兼ね備えているかなんです」
必死感がにじみ出る?漱石の絵
さて、数々の名画を作品に引用し、時には辛口の美術評論もしていた漱石だが、自分の絵の腕前はどうだったのか?
「うーん、あなたにも描けるレベル。でも、けっこう必死で描いています。プロの気分で頑張っちゃってる。そこが面白い。書道でいえば、基本の楷書ができるから崩し字が書けるわけですが、漱石の絵は最初から崩れているから個性しかない。自己完結しています」
日本の近代美術を専門とする古田さんが、同時代に活躍した漱石の『草枕』を愛読していたことから、この企画が生まれた。長年温めてきたアイデアを実現させ、漱石の中にある美術世界がますます広いことを実感したという。
絵を見た後に『三四郎』や『草枕』を読んだら、どんなイメージが立ち上がってくるのか、試してみたくなる展覧会だ。
5月14日~7月7日
東京藝術大学大学美術館
東京都台東区上野公園12-8
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00~17:00(入館は16:30まで)
月曜休み
一般1500円
7月13日~8月25日に静岡県立美術館に巡回。
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