「モノ消費からコト消費」では勝負にならない訳 水野学×山口周「役に立つ戦場から撤退せよ」
今こそ「モノ」の時代
山口:「役に立つ」の競争でも、ある程度ローカルな産業は案外、持ちこたえています。代表的なのは、運搬コストがかかるもの、例えばガラスや陶器というモノは重くて嵩張って単価が安いので、動かすコストのほうが大きくなってしまいますよね。そこで「ローカルで作ったほうがいい」となり、分散化しているんです。
水野:その点から言っても、ウェブ、網業(前回参照)は一番厳しいですね。動かしているのが電子なので、物理的に一番軽い。
山口:自動車や家電は「動かすコストが高すぎるからドメスティックに」というガラスと、「動かすコストがゼロに等しい」というウェブの中間にあると思います。だからまだある程度、その国ごとの企業が生き残れる余地があって、Googleほどの収斂は起きていないのでしょうね。
アスレチックの例を出せば、日本のプロ野球は一軍登録選手が300人ぐらいいて、彼らは食べていける。それどころかかなり裕福な暮らしができます。
水野:確かに、100メートルのスプリントでは、世界ランク100位でさえ食べていけないのに、国内で300人ってすごい。競技自体の人気というだけでは説明できないですね。この差って、山口さんはどう解釈しますか?