コロナショックが人の生活をここまで蝕む根拠 需要×供給×金融の危機が経済を痛めつける

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さらに懸念が高まると、次に起こるのは資金流動性の低下です。資金流動性とは「資金が確保できるか」ということ。まさに、その資金が確保できずに破綻したのがリーマンだったわけです。リーマンの例でもわかるように、資金流動性は、マーケットに参加する当事者自身の格付け、信用力、財務の健全性、イメージなどが大きく左右するものです。

ここで重要であるのは、流動性危機のタイミングにおいては、どれだけ仮に実際にも資本を積んでいるのかということよりも、十分な流動性を確保できているかということが問われてしまうということです。

結局、リーマンの例で明らかなように、流動性がなければ破綻につながる恐れがあるわけです。実際のところはともかく、いったん取り付け騒ぎ的に市場で問題視されれば破綻に追い込まれる側面があるということには注意が必要です。

以上述べてきたように、リーマン破綻に際して、リーマン自体が流動性の枯渇によって破綻したこと、そしてMMFやCPへと流動性リスクが波及し金融危機の発端となったことから、現在MMF、CP、レポ取引へ注目が集まっていることを指摘しておきたいと思います。

なお、今回のコロナショックにおいては、金融市場では、ハイイールド債、レバレッジドローン、CDO、CLOなどがリスク要因として注視されています。とくに、ハイイールド債やレバレッジドローンにおいて問題として指摘されるのは、債務者である債券の発行体がエネルギー・セクターやシェール関連企業である割合が高いということです。

それは、これら企業はもともと低い格付けであること、原油価格の低下により大きな影響を受けていること、もちろんコロナショックの影響も当然受けるであろうことから、デフォルト・リスクが高まっているからです。

この項の最後に指摘しておきたいのは、冒頭に述べた、この数週間、金融市場において参加者がこぞってさまざまなアセットを売却してドルを手に入れようとしている行動の背景には、流動性リスクを回避したいということが大きな要因として存在しているのです。

さまざまな取引に決済通貨としてドルが使われていること、投資信託等の金融商品解約に備えてドルを確保していくことなど、その個別理由は異なりますが、ドルでの流動性確保が重要となっていることから、それぞれのプレイヤーがドルの確保に走り、さらにはお互いに疑心暗鬼になって不用意にはドルを放出したくないという心理にかられてしまう。

さらにはリーマンショックにおいて流動性危機の震源地となった金融商品がやはり今回も売られている。だからこそ日米欧の中央銀行が量としての金融緩和にも力を入れているのです。

複合危機としてのコロナ危機

私は、「コロナショックが招く『経済危機』最悪シナリオ」(3月14日配信)において、コロナショックが金融危機や経済危機に陥るリスクシナリオについて論じました。もっとも、その後、さらにコロナウイルスが欧米で拡大し、経済活動が麻痺している様子を見て、コロナショックは金融危機や経済危機等よりももっと甚大な損害をグローバル社会にもたらす可能性のある複合危機にまで陥ってしまう可能性もあるのではないかと懸念しています。

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