コロナショックが人の生活をここまで蝕む根拠 需要×供給×金融の危機が経済を痛めつける

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私は、コロナショックへの経済対策のあり方について、「コロナショックから日本を守る経済対策の要諦」(3月18日配信)で論じました。その全体構造を以下にも示しておきます(図表5)。

同記事での重要な点をまとめておくと、経済対策を考えるうえでも、第1に「最大の問題の最大の問題箇所」から逆算して施策を検討していくのが戦略の要諦になるということ。第2に需要ショックにおいては、個人に対しては失業への対策、企業に対しては倒産への対策を最優先する。

第3に供給ショックにおいては、「問題と対策」の中核部分である「コロナウイルス対策×経済活動維持」への対策を最優先する。そして、金融ショックにおいては、金融危機の防止への対策を最優先する。

金融ショックにおいては、相場がさらに大きく下落し、市場全体で信用収縮が起き、さらには流動性危機が発生、金融機関へのダメージも多大な状況となり、金融危機にまで及んでしまうというのが最悪のシナリオではないかと思います。

ここまでの複合危機発生も否定できないコロナ危機に対しては、「最大の懸念・問題」部分への直接の訴求という点には留意しながらも、対策の規模やスピードには、「超異次元」で臨むことが重要になってくるのではないかと思います。そこでは、今後の展開によっては、早期のうちに金融機関対策を講じておくことが、より多くの企業を存続させ、日本発の金融危機を防いでいくためにも重要になってくるのではないかと思います。

図表6においては、マネーフローへのコロナショックの影響をまとめました。

コロナショックは、「3つの同時多発・複合危機」の1つであった、「個人×企業×金融機関×政府」の4階層に同時に襲来しています。その結果、図表6で示したように、家計から企業へと流れる消費のマネーフローが減少し、企業から家計へと流れる給与のマネーフローが減少し、海外とのマネーフローも減少しています。金融機関と家計や企業とのマネーフローもこれからの展開次第では大きく影響を受けるでしょう。

だからこそ、政府には、超異次元の経済・金融対策を最大効果ポイントに対して実行する準備を進めておくことが求められているのではないかと思うのです。

もちろん超異次元の経済対策については財政危機への懸念も指摘されるでしょう。もっとも、イタリアやスペインなどで、多くの死亡者を出していることを目の当たりにすると、これまで現代人が経験したことのないような危機が起きているなかで、複合危機管理として、大規模な経済対策の準備だけは進めておくことは重要ではないかと思います。

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今回は「悪いドル」の状況になっていますが、リスクオフの局面で円高になってきたのは、日本の対外純資産が先進国の中でトップであることを主因としているものであることを最後に指摘しておきたいと思います。大きな財政赤字を抱え、対外純資産も大きな赤字となっているアメリカでも、異次元の経済対策を計画していることを今こそ参考にしなければならないと思うのです。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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