杉並区の高円寺駅から徒歩3分の場所にある風呂なし物件に住む30代前半の女性Aさんは、自分が通う銭湯でアルバイトを始め、イベント企画等にも携わるうちにすっかり町になじんだそうだ。
前述の中澤さんも、銭湯の番頭さんと仲良しになり、時々飲みに行くのが楽しいと言っていた。客同士も裸の付き合いだからか、自然と言葉が交わされる。銭湯に通うことで、地元とのつながりが生まれるきっかけにもなるようだ。
ちなみに、都会生活と銭湯が楽しめる、風呂なし物件の多いエリアはどこなのだろう。鹿島さんに聞くと、「大田区蒲田や京王線の初台駅・幡ヶ谷駅・明大前駅、東横線の都立大学駅・学芸大学駅などがオススメ」と教えてくれた。
減りゆく「銭湯」と「風呂なし物件」を救え!
最近では渋谷区の「改良湯」や荒川区の「梅の湯」などリニューアルする銭湯やイベントが充実した銭湯も増えており、巷ではちょっとした銭湯ブームが起きている。
とはいえ、個人宅に風呂が付き始めた1950年代以降、銭湯は減り続けているのが現状だ。総務省の「平成20年住宅・土地統計調査」によれば、関東大都市圏の浴室保有率は約94%。つまり風呂なし物件も6%しかなく、年々減っているという。
こうした中、減りゆく銭湯と風呂なし物件を救おうと、銭湯業界の活性化に取り組む「東京銭湯」と、リノベーションや賃貸仲介業を展開する「フィールドガレージ」が協力し、2018年7月に誕生したのが「東京銭湯ふ動産」だ。同サイトを通じて成約した物件の仲介手数料が売り上げとなる。
きっかけは、フィールドガレージに勤める鹿島さんが、風呂なし物件と銭湯の見学ツアーを企画したことにある。不動産業を生かして大好きな銭湯に何か貢献できないかと考えた末、「風呂がなければ、皆銭湯に行くのでは」とひらめいた企画だ。
蒲田や自由が丘、高田馬場、中目黒などで9回ほど開催したところ大好評で、ニーズが見えてきたという。一方、風呂なし物件は大手ポータルサイトで探しにくく、不動産屋でもあまり紹介してもらえないといった現実もあった。家賃の低い風呂なし物件は手数料を多くとれないため、不動産屋が敬遠するからだ。「ならば専用サイトを作ろう」という話になった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら