サイト開始から1年半で問い合わせ数は、80件。数としては多くないが、成約率は2割に達している。「3割あればかなりの好成績とされる中、風呂なし物件としてはいい数字では。オーナー様からの問い合わせも増えつつあります」と鹿島さんは説明する。
一般的に風呂なし物件は不動産屋からは「生活保護者や高齢者など賃貸物件を借りられない人のための物件」として扱われることが多く、「若い人が入ってくれて嬉しい」と喜ぶオーナーも。
同サイトの人気の秘密は、23区内の中でも「テンションが上がるような立地のいい物件を選んでいる」(鹿島さん)点にある。また、オーナーから直接掲載希望があった物件はよほどの遠方でない限り現地に行って取材し、その魅力を物件情報欄に丁寧に綴るようにしているという。
例えば、「DIYも可能! あなた好みの風呂なし物件」と題した桜台駅近くの物件には、
など現状のポイントをレポート形式で記載するほか、DIYの具体的な提案や近所のデザイナーズ銭湯の情報なども盛り込んでいる。淡々と箇条書きされた一般的な物件欄よりも断然イメージが湧きやすいのではないだろうか。
女性客への配慮もバッチリ
女性客への配慮も意識している。プライバシーの観点から基本的にはトイレや玄関が共有である物件は紹介しない。また、風呂なし物件は築古でオートロックもないので、女性客には2階以上の部屋を勧めるのはもちろん、女性専用アパートなど極力安心して住める物件を紹介している。
例えば前述の中澤さんの物件は1階にオーナーが住んでおり、TVモニター式のインターフォンもついている。Aさんの物件も1階はオーナーが営む店舗となっており、夜間は第三者が侵入しないよう居住者エリアの入り口を閉鎖してくれるそうだ。
こうしたサイト構成や誠実な仲介が現在の実績につながっている東京銭湯ふ動産。今後は、「例えば一棟の風呂なし物件を作り、その住民と銭湯コミュニティをコラボさせるなど、街作りにも広げたい」と鹿島さんは語る。
消えかけていた風呂なし物件と銭湯。この2つの魅力を掛け合わせた働きかけが今、一部ではあるが若い世代の心をつかみ、彼らの暮らしを豊かにしている。ある意味これは、編集力次第で既存のモノの価値が再発見され、生かされる道があるという好事例かもしれない。さまざまな社会課題解決のヒントにもなりそうだ。
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