シャワー付きの物件や、風呂の数が不足していそうなシェアハウスも含み掲載しているが、8割が風呂なしだ。築40~50年で、6畳+キッチン(3畳)+押し入れ(1畳半)といった約20平米の部屋が、標準的な風呂なし物件だという。極力トイレと玄関が共有ではない物件を選んでおり、各物件情報欄には「銭湯まで徒歩5分」など近隣の銭湯情報が記載されている。
「問い合わせてくる人の多くは、20~30代。手頃な家賃で都心に住める点が魅力的なようです」と、同サイト企画部長の鹿島奈津子さんは話す。
風呂がないと、家賃は相場の2万~3万円安くなるという。時には「広尾で6畳の角部屋、トイレは共同だが洋式で家賃2万9000円」というお宝物件と出会えることも。
ちなみに銭湯に1カ月間通うとなると、東京都の場合、回数券(10枚)なら4400円×3枚=1万3200円かかる。しかし、風呂なし物件の家賃にこの分を上乗せしても、たいていは相場の家賃より安く済む。しかもガス代や水道代も節約できる。なおかつ毎日大きな湯舟に入れるうえ、風呂掃除の必要もない。
風呂をシェアすることで複数のメリットを享受できる――。よく考えると今の時代にマッチした合理的なライフスタイルなのかもしれない。ミニマリストの客も少なくないようだ。例えば、「冷蔵庫すら持たないというミニマリストの男性もいらっしゃいました」と、鹿島さん。彼は中目黒駅から徒歩4分、家賃3万5000円の風呂なし物件を選び、職住近接の暮らしをかなえたという。
風呂なし物件は、最近増えている“多拠点生活者”にも好まれている。コンテンツ制作会社所属の小池日向さん(27歳)は、昨年秋に太田区の梅屋敷駅から徒歩5分弱の場所にある部屋を借り始めた。長野県の会社店舗と神奈川県の実家だけでは全国出張に対応しにくいため、3つ目の拠点として羽田空港に近いこの物件を選んだ。
「あまり家にいないので家賃は抑えたかったし、風呂のない生活も面白そうだと思った」と、小池さん。4畳半の居室+キッチン+収納で構成された2階の角部屋は、家賃2万9000円。築50年と古いが、「味があって新築より落ち着く。日当たりや風通しも抜群」と満足そうだ。
現在、近所の銭湯とスポーツジムのシャワーを風呂代わりにしている。体を鍛え、湯舟に浸かる生活を始めたからか、肌がつやつやになったという。「最近、僕が楽しそうに暮らしているからか、後輩が同じアパートに越してきたんですよ」と、小池さんは話す。
意外な副次的効果も。「銭湯に行くためには1時間ほど時間を作る必要があります。そのため、仕事をいったん切り上げるなど生活にメリハリがついたという声も。新たなコミュニケーションを楽しむ人もいます」(鹿島さん)。
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