時短・効率化ニーズが高まる昨今、電気圧力鍋や電気無水鍋など、食材を入れてスイッチを押すだけで自動調理してくれる電気鍋が人気となっている。
こうした中、地道に売り上げを伸ばしているのが、2015年に日本市場に登場した台湾製の「大同電鍋」だ。2017年以降に販売が加速し、2019年は4000台を突破したという。
電鍋は、昨今のハイテク電気鍋とは趣が異なる。台湾で1960年に発売された当初から基本構造がほぼ変わっていないという、ある意味レトロな商品なのだ。当然、豊富な自動メニューや予約機能などは一切搭載されていない。家電大国ニッポンにおいて、今なぜこのローテク電気鍋を指名買いする人が増えているのだろうか。
東芝との技術提携で生まれた鍋だった
製造販売を行っているのは、台湾の大同公司。2018年に創業100年を迎えた、台湾を代表する総合電機メーカーだ。
実はこの電鍋、日本とご縁がある。1955年に東芝が日本初の自動式電気釜を発売したことはご存じだろうか。当時、釜でご飯を炊くという家事労働から主婦を解放する革命的商品だったため一気に国内で普及したという。こうした背景の中、東芝と大同公司が技術提携して誕生したのが、「大同電鍋」(以下、電鍋)なのである。
東芝製品と外観も使用法も非常に似ているこの電鍋は台湾でも大ヒットしたが、その後の経緯が面白い。日本ではどんどん進化し現在の高性能炊飯器へと姿を変えた一方、台湾では発売当初からほぼ基本構造も外観も変わらないまま人々の暮らしに根付き、累計1500万台も売り上げるロングセラー商品となったのだ。
なんと一家に1.7台ある計算になるらしい。街中でも飲食店や屋台などで使われているほか、職場にもたいてい電鍋が置かれているという。なぜこれほどまでに台湾人の生活に浸透したのだろうか。
「とにかく使いやすい。スイッチ1つで操作はシンプルなのにいろいろな料理が可能」と、大同日本機電貿易二課係長の陳正修さんは説明する。
基本的な使い方は、外釜に水を投入し、食材を入れた内釜を外釜にセットして蓋を閉め、スイッチを押すのみ。これだけで煮る・蒸す・炊くが可能なため、炊飯のほか煮物や煮込み、蒸し物、スープ、お粥などさまざまなメニューが楽しめる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら