台湾発の「ローテク電気鍋」が密かに売れるワケ 東芝との技術提携から約60年後のブレイク

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何より「栄養が落ちにくく、美味しく仕上がる」(川口さん)点も大きなポイント。蒸気で加熱するのでふっくら仕上がり、煮崩れもしにくい。特に野菜は甘味が増すという。肉まんを蒸すと電子レンジとの違いがよくわかるといい、時間は10分程かかるが、加熱ムラのないふかふかの味わいを堪能できるそう。

ここ数年流行している電気鍋のほうが多機能で便利なのかもしれないが、豊富な自動メニューなど使いこなせないと感じる人もいるだろう。スイッチ1つのシンプルさで最近の電気鍋と遜色ない調理をかなえてくれる点が、受け入れられている大きな要因なのかもしれない。

メンテがラクで30年以上も壊れない!

だが、最初は戸惑うこともあるようだ。電鍋は、「180mlの水で30分前後」など、外釜の水の量で加熱時間が決まる。加熱が足りないときは水を追加すれば済む話だが、料理ごとに水量を操れるようになるまでは場数が必要になりそうだ。

電鍋でパンやヨーグルトの発酵までこなす川口さんも、当初は今よりレシピなどの情報が少なく試行錯誤したという。そこで、川口さんはユーザー同士で情報共有を図ろうと、2014年に「大同電鍋愛好in日本」というフェイスブックグループを立ち上げた。現在、会員は4000人超。レシピや悩み相談などが公開されている。

蒸し料理も。写真は川口さんによる「蒸しソーセージ」。

「でも、適当でもあまり失敗しないので大丈夫。何でもアリの鍋ですから」と、川口さん。シンプルだからこそ気楽にいろいろ試してみることが、レパートリーや楽しさを拡げていくコツのようだ。

基本的には焦げつく心配もなく、メンテナンスがラクな点も魅力。常に清潔にしておくべきは内釜と外釜内部のみで、内蓋と蒸し皿は使ったときに洗えばいい。臭いが気になるパッキンがないのもポイントが高い。

また、丈夫さにおいても定評がある。「台湾の友達が30年使ってやっと壊れたから買い替えたそう。落としてボコボコになっても使えたようです」(川口さん)。

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価格は色にもよるが、M(6合炊き)が1万2800円(税込)、L(10合炊き)が1万4800円(税込)。最先端の電気鍋に比べたら安価だ。しかも何十年も持つのだからコスパは相当いい。ちなみに、日本仕様は保温スイッチの追加と電圧以外、台湾仕様と違いはない。台湾仕様も日本で使えるそうだが、修理対応などを重視するなら日本仕様のほうがいいだろう。

今後も、同社は価格競争にさらされやすい量販店では販売しない方針だ。東京、大阪、仙台の百貨店で行ってきた実演販売に関しては、ほかの地方にも広げ認知度を上げたいという。

誰でも簡単に使えて長持ちし、いろいろな料理が楽しめる電鍋。しかもレトロかわいいビジュアルかつお手頃価格。ヒットの理由は、そんな総合点の高さのほか、暮らしのシンプル化志向やいいモノを長く使うことに豊かさを感じる近年のムードにハマった面もあるだろう。移り気な消費者も多い日本で、長く愛される生活道具として定着するのか、今後も注目したい。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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