バーチャル総会の議論はそもそも、企業と株主・投資家の建設的な対話を促すための環境整備という視点で始まったものだ。
取締役会が不適切な意思決定をすれば、株主は会社側と対話をしたり、取締役の選任議案に反対するなど、株主総会で権利を行使したりすることもなく、その会社を見限って株を売ってしまう。一部のエンゲージメントファンドが根気強く会社と対話をし、権利を行使する場合もあるが、それはあくまでも例外でしかない。
株主総会の実務に詳しい大塚和成弁護士は、「上場会社と株主の対話をどのように促し、株主総会を活性化させるかというのは、昔からある、古くて新しいテーマ」だという。
バーチャル総会は日本の慣行を変えるか
日本は3月期決算企業が上場会社の6割強を占め、総会開催日が特定の日に集中しやすい。さらに、株主総会の招集通知を発送してから総会開催日までの日数が短く、議案を検討する時間が十分にとれない。欧米の投資家は長年、こうした点の弊害を指摘し続けているが、バーチャル総会には日本の株主総会慣行を多少なりとも変える機能を期待できるだろう。
ある上場会社の幹部からは「今後、バーチャル総会が一般化すると、経営側は緊張感が高まる」という声もあがる。
日本企業は株主に総会前の議決権行使を促し、会社提案の議案可決ラインの票を確保した上で総会に臨むことが多い。しかし、バーチャル総会が一般化すると、事前に議決権行使をせず、当日の総会の場で議決権行使をする株主が増え、総会終了まで結果がわからないという事態が一般化する可能性がある。そうすると、その分だけ経営陣の緊張感は高まり、ガバナンス上は好ましい。
想定外の新型コロナウイルス禍でバーチャル総会が広まれば、日本企業のガバナンス向上に一役買うことになるのかもしれない。
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