愛国心でも愛郷心でもない、日本人の教養 山折哲雄×安西祐一郎(その1)

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日本の3つの流れ

安西:たとえば留学という意味では、夏目漱石がロンドンに留学をして、非常に苦しんだと言われていますよね。明治になって日本は、それまでの儒教的な伝統などを背負いながら、近代と本当にぶつかったという気がするんですよね。単にただ知識をシャワーのように浴びて苦悩したというよりも、やはりいちばん奥の底の底で苦しんだというふうに読みとれます。

今の日本には3つの流れがあるように思います。ひとつは、長らく続く、明治近代以前の伝統的な日本。たとえば江戸時代の影響は、薄まっていますけれども、今でもある程度はあります。2つ目は、明治以降の外からの輸入的な近代の流れ。さらに3つ目として、インターネットなどの影響によるグローバル化の流れがあります。この3つの軸が混在しているわけです。

極端に言えば、漱石の時代の教養は「伝統」と「近代」の2つでした。それに対し、これからの若い人たちは、「伝統」と「近代」と「グローバル化」の3つの軸の中で、教養を考えなければなりません。それが、今までの時代とこれからの時代の違いです。だからこそ、これからの若い人たちには、先ほどから話に出ている「原風景」を、自分で自分の中に作り出していく機会を持ってほしいと思います。

つまり、欧米列強に追いつくのが日本の目標という時代ではなくなっている。そうした中で、世界の中での日本という感覚を持つ一方で、日本人としての伝統というか、「結局、帰るところは日本の大地だ」という感覚とは何かについて、しっかり考えるべき時がきている気がします。

(司会・構成:佐々木紀彦、撮影:今井康一)

※ 続きは4月1日(火)に掲載します

 

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