50万円で作れるお墓「樹木葬」が人気上昇のワケ 「夫の一族の墓に入りたくない」という声も

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「業界内には、3万円程度で、遺骨を遠方の寺院やNPO法人に送るというサービスもあります」(小林氏)

購入するタイミング、動機については、親などが亡くなってから慌ててお墓を探す、といったケースもまだ多い。しかし近年、孤独死などがメディアでよく取り上げられるようになったこともあり、終活がブームと言われるほどに広まった。物件探しのような感覚で同社のサイトを訪れるユーザーも増えたという。

では、自分のお墓を選ぶ際のポイントとしてはどんなことが挙げられるのだろうか。お墓に関しての窓口業務を行っているカスタマーコンサルティング部の藤田吉雄氏は、次のように説明する。

「ユーザーアンケートでのお墓選びのトップ3はお墓の種類、アクセス、金額です。大切なのは、実際に霊園を見学してアクセスや雰囲気をご自身で感じ取っていただくことですね。当社のお客様の傾向としても、見学をされた方のほうが成約に結びつく可能性が高いです」(藤田氏)

同社では、2040年までに亡くなる人は170万人と試算しており、お墓ビジネスは今後も拡大すると見ている。

「ただし、件数は増えるものの、多様化が進みますから単価が高いものもあれば安いものもあるといった状況になるでしょう。金額の面で見れば伸びるというよりは、横ばいが予想されます。一方で、ネットを使って情報を得る、購入するという層は今後も増えていくと予想されるので、当社の成長余地はまだまだあると考えています」(小林氏)

こうした状況を鑑み、同社では現時点の非ネット世代への接点を増加するとともに、接客の質を高め、医療や介護、相続などを含めた終活ニーズにトータルで応えられるサービスを提供していきたいという。

具体的には、2019年10月から日本郵便との連携により「終活紹介サービス」を試行している。地方ではまだ互助会などの地縁による葬儀・墓の手配が中心で、同社のサービス範囲を広げられる可能性があるそうだ。

接客面では、顧客のニーズをより引き出すため、社内に横断的なチームを形成。顧客接触の体験をデータとして蓄積する。

「死後を含めたデリケートなことについて、安心して相談できる体制を作ることが大切です」(小林氏)

人気が高まっている「樹木葬」の特徴とは

次に、今人気が高まっている樹木葬の例として、アンカレッジの事業を紹介しよう。2013年3月にサービスをスタートし、これまでに16箇所、1900件が成約。売り上げは当初の2000万円から15倍に成長したそうだ。

アンカレッジの拠点である、港区の道往寺。同社では樹木葬関連のほか、寺ヨガ、企業研修、寺社コンの企画運営など、一般人とお寺の接点づくりのビジネスも行っている(筆者撮影)

同社の樹木葬の特徴は、好アクセスであること、花や樹木で庭園のように飾られているほか、一つひとつの区画が石のプレートでわかるようになっていることだ

価格は全国平均で1人用が50万円、2人用が150万円、4人用が200万円。樹木葬を運営したいと考えているお寺に同社のノウハウを活用して樹木葬のお墓を作ってもらい、同社が仲介してユーザーに販売するというビジネス形式をとっている。

「売り切れる分だけを作るのがポイントです。お寺には、まず乗用車3台分の広さから始めていただくことが多いですね。初期投資は1200〜1300万円。当社の特徴は売っておしまいではなく、お寺と一緒にご遺族とのコミュニケーションなどのサポートをすることです」(アンカレッジ代表取締役の伊藤照男氏)

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