50万円で作れるお墓「樹木葬」が人気上昇のワケ

「夫の一族の墓に入りたくない」という声も

具体的には、例えば戒名や供養の意味合いなどを本人や遺族に丁寧に説明することもその1つ。

同社の紹介する樹木葬は宗教不問だが、実際にはどの程度の宗教的サービスを提供するかはお寺に任されている。無宗教であれば年忌法要などの儀式は必要なさそうに思うが、意外にも、同社を通じてお墓を購入した人の約7割は法要を行っているそうだ。

道往寺内にある樹木葬スペース(筆者撮影)

「日本は無宗教と言われますが、宗教が求められていないということではないと感じています。特に、キリスト教、神道、仏教とある中で、仏教は一般的なイメージからしても弔いとなじみがよい。仏教界では宗教離れを嘆く声が高くなっていますが、これまでお寺が努力してこなかったことも大きいでしょう。今いっそう、お寺のほうからのアプローチが求められていると思います」(伊藤氏)

お墓を求めるユーザーと接する中で同社が強く感じているのが、女性の意識の高さだ。より具体的に、現実的に考えている印象を受けるという。

「夫の一族の墓に入りたくない、という声はよく聞きます。お墓の世話に自分が苦労してきたから、子どもには同じ苦労をさせたくない、ペットと一緒に入りたい……などですね」(伊藤氏)

このようにお墓ニーズは多様化しており、マイホームと同様、選択の主役が女性である場合も多い。しかし、お寺、石材店などの提供者側にはまだ浸透していないと感じるそうだ。

アンカレッジ代表取締役伊藤照男氏。異業種からの転身で、僧侶ではないが、樹木葬やイベント企画運営のビジネスを通しお寺の活性化を目指す(筆者撮影)

「石材店さんにお話を聞くと、『石は長く残るからいい』と言いますね。しかし今広まっているエコロジーやSDGsといった価値観に、亡くなってから100年も残るような遺構物はなじみません。お墓というのは、自分や家族のものはともかく、一般的に気持ちがいいものとは言えませんし……。樹木葬は花や樹に囲まれて、明るくてキレイなイメージがあります。また自然に返る意味で、循環性を感じさせます。これらが、女性の心をつかんだのではないかと思います」(伊藤氏)

お墓の多様化はさらに進むと見ており、例えば海洋散骨のニーズも高まっていくのではないかという。

「ただし、やはり形に残して供養をしたいというニーズが多数を占めると思います。そうなったときに、お寺には役割を果たすことが求められます」(伊藤氏)

LGBTカップルも1つの墓に

同社では2019年の11月より、あるプロジェクトを開始した。1つの墓に葬られたいというLGBTカップルの希望を実現する取り組みだ。実際の場合を想定し、遺族との話し合いを含むガイドラインを作成し、同社とビジネス関係のある寺院を対象に説明を始めている。2020年4月をめどに一斉導入を目指しているという。こうしたニーズに目を向けたのは、海洋散骨の事業者より、行き場のないLGBTカップルが海洋散骨を利用しているケースが多いという情報を得ていたことが理由だそう。

「仏教の考え方では人間も動物も命の尊さに代わりはない。最近では多くの霊園で、ペットも故人とともにお墓に入ることができるようになっています。今、同性のカップルが1つのお墓に入るのは困難ですが、宗教的な禁忌はなく単に慣習のうえでのこと。お寺は人権のリーダーとして、相談にのる体制を作り、積極的に発信していくべきです」(伊藤氏)

お墓や葬儀は日本的な因習の牙城と見える。しかし、地方地方にさまざまな葬り方があることを見てもわかるように、それぞれ異なる人々の心のありようが、長い間積み重なって形作られてきたもの。時代や価値観とともに変わっていくことは当然考えられる。

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