娘の愛は失いたくないが、気ままな生活もやめられない
こんな男が、なぜモテるのか?
ダメ男が女性を引き付ける理由はいろいろあるだろうが、ハンクの場合、父親としての顔はたいへん好ましく、そこがどうにも憎みきれない点の筆頭である。ベッカは父親がどうしようもない女好きであることをそこそこに認識しつつ、それでも母親との復縁を願って、いつも会うときは「パパ大好き」と抱きつく。そんなベッカの愛情だけは、ハンクは何としても失いたくないのだ。海辺でベッカと遊んでいるときの、ハンクのこんな独白がある。
「家族は俺なしでも幸せ。一方、俺は女をとっかえひっかえの毎日。(中略)なぜ、こうなったのかはわからない。でも、彼女(ベッカ)を失いたくない。急がないと溝は広がっていくばかりだ。いつまで大好きと言ってくれるだろう」
何を一丁前にたそがれてるんだと、ど突きたくもなるし、切なくもある。今の生活を変えなければ、すべてを失ってしまうであろうことを、ハンクは十分わかっている。自分の生き方というより、自分自身が嫌で仕方がないのだ。一方で、ハンクは家族を望みつつも、どっちつかずの中途半端な状態を、実は楽しんでいるようにも受け取れる。
要するにハンクは、「決断できない(あるいは決断したくない)」男なのだ。優柔不断は、ダメ男の典型だろう。自業自得とはいえ、家族の問題で傷つきしょんぼりしたハンクを、「かわいい」などと思った女性は、自覚がなくとも潜在的なダメ男好きの可能性大なので要注意。
ハンクがモテる最大の理由は、『LEON』というよりは『Safari』的な、ちょいワルでややルーズなLAスタイルのファッションに身を包んだ、グッド ルッキングにあることは言わずもがなである。結局は見た目の問題なのか!? とガッカリした男性諸氏がいたら申し訳ない。
個人的には、セックスアピール以外にハンクには引かれるものがある。それは、彼のとてもシニカルでストレート、そしてサーカスティック(嫌味)なモノの見方や言い方だ。第3回『Dr.HOUSE』の主人公ハウスにも通じるものがあるが、つねに斜に構えつつ、虚勢を張ったハンクはより子供っぽく、だから嫌われちゃうんだよね、ということを次々とやってしまう。
しかし、その痛さが共感できるところでもある。筆者のようなライター稼業の人間は、往々にして物事をナナメに見るきらいがあるので、ハンクのキャラクターがアメリカで批評家受けしたことは、大いに納得できるのだった。
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