妊娠中の妻と障害者の長男を残して、死ぬに死ねない
日本人が生涯でがんになる確率は2人に1人、3人に1人はがんで亡くなると言われる時代。もし、ある日突然、がんで余命を宣告されたら……!? そんな心配をまったくしたことがないという人は、ほぼ皆無だろう。
第7回は、肺がんで余命わずかと告げられた、50歳の高校教師が主人公の傑作ドラマ『ブレイキング・バッド』を紹介する。
ウォルター・ホワイト(ブライアン・クランストン)は、米ニューメキシコ州アルバカーキにある高校の化学教師。ある日突然、咳き込んで倒れて病院へ運ばれる。診断は肺がんで、余命は2年以内。脳性麻痺の長男ジュニア(RJ・ミッテ)、妊娠中の妻スカイラー(アンナ・ガン)を養う一家の大黒柱として、最大の心配事は自分が死んだ後の家族の生活費だ。治療費でさえままならい絶望的な状況下で、ウォルターは麻薬取締局の捜査官である義弟ハンク(ディーン・ノリス)の仕事ぶりをテレビで目撃し、押収された巨額のドラッグ・マネーに、あることを思いつく。
それは、化学の知識を生かしてドラッグ(メタンフェタミン)を製造し、かつての教え子でドラッグディーラーとして事情に通じるジェシー・ピンクマン(アーロン・ポール)を相棒として、家族に残す現金を調達するというものだった。ひとたび犯罪に手を染めたウォルターの人生は、後戻りできない壮絶なものとなっていく。
家のローンは10年以上も残っている。脳性麻痺の高校生の長男は軽い言語障害があって歩行には松葉杖が必要で、妻は第2子を妊娠中。日々の生活で精いっぱいで、頼りになる貯金なんてあるわけもない。そもそも、高校教師の給与は安く、放課後は洗車場でアルバイトをしながら家計の足しにしている時点で過労である。
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