受注生産だけで売れまくるチーズケーキの秘密 選べる楽しさより、1つの品質だけで勝負する
「冷たいよりも体温に近いほうが、そして固体より液体のほうが味や香りを感じやすい。ですから料理では、温度が違うものや、舌で押しつぶしやすいもの、かむことによって味が出てくるものなどをさまざまに組み合わせることによって、味わいの奥行きを出すわけです。そのアイデアを生かしたのが私のチーズケーキです。料理なら何皿も使って表現することを、1台のケーキで表すわけですから、難しい挑戦でした」(田村氏)
商品の大きな特徴が、温度によって刻々と変わる、味と口溶けを楽しめることだ。
冷凍庫から出したばかりでは、アイスケーキのような冷たさと、しゃりっとした歯ごたえが特徴。チーズケーキらしい、レモンの酸味が引き立って感じられる。
半解凍では、周囲が溶けかけて十分に甘味や香りが感じられ、中心部は凍ったままという、コントラストを楽しめる。特有のなめらかな舌ざわりも堪能できる。
「口の中でほろっと崩れていくような軽いケーキ」
完全に解凍した状態では、田村氏が「はかなさの魅力」と表現する、繊細な舌ざわりが堪能できる。また、味や香りもいちばん強く感じられ、それでいてさっぱりしている。一陣の風が吹き抜けたような、さわやかな味わいと口当たりだ。
「フレンチのコースの最後に出すデザートのように、口の中でほろっと崩れていくような軽いケーキにしたかった。崩れやすいから、通販では冷凍状態で出荷するしかありません。その限定条件が、結果的に、溶ける過程を楽しむケーキというアイデアにつながりました」(田村氏)
冷凍は食材を新鮮な状態で遠方まで届けるための技術。しかしどうしても、品質が変わってしまう、溶かす段階で失敗してしまうなどのマイナスイメージがある。しかし田村氏は固定観念を逆手にとって、逆転勝利に持ち込んだ。
もちろん、冷凍でも溶けていても、おいしく感じられる商品とするべく、いくつもの工夫を凝らしている。
まず、香りをつける素材としてトンカ豆を採用。杏仁のような甘い香りが脳に甘味として認識されるため、その分、砂糖の使用量を減らすことができる。
これは、冷凍状態で届く、商品の特徴とも関連する。
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