受注生産だけで売れまくるチーズケーキの秘密 選べる楽しさより、1つの品質だけで勝負する
「日本の飲食業は労働集約型で時間と手間がかかる。だから本来なら、ビジネスとして成り立ちません。見習いを含む若手シェフの、長時間労働とモチベーションがあるからこそ成り立っているんです。しかし、大勢のスタッフが朝から晩まで働いても、『おいしいものを提供してお客様に喜んでもらいたい』という彼らの気持ちをお客様に届けるのは、今の飲食店のモデルではなかなか難しいと思います」(田村氏)
そこで、チーズケーキという、レシピどおりに作れば完成するシンプルな商品、そしてたくさんの種類から選べる楽しさよりは、1つの品質だけで勝負する方法を選択することとなった。
「種類が多くなれば工程も複雑になり、作業効率が落ちる。また、人気のあるものが売れる一方で、選ばれないものも出てくるから、フードロスにつながります」(田村氏)
「選べる」という価値観は古い
また、多様化し選択肢も無限と言えるほど広がった現代の市場において、「選べる」という価値観はもはや古いと考えている。
「選ぶ楽しみは昭和の概念だと思います。今はみんな、対象が多すぎて何を選んでいいかわからない。だから自分の信頼するインフルエンサーの勧める商品を選んでいるという状態です。私の商品はそれを狙ったというわけではありません。たまたま、自分でできる範囲のことを積み重ねてきた結果が、時代にちょうどはまったということではないでしょうか」(田村氏)
夢は、日本を代表するブランド、例えば洋菓子界の「ユニクロ」のような存在に育てること。2021年をメドに海外進出も検討している。
【2020年3月8日13時50分追記】初出時、海外進出についての時期に誤りがありましたので上記のように修正しました。
フレンチシェフ出身としてはパリを目指したいところだが、人口増加と経済発展が目覚ましい、アジアが現実的だと見ている。今後の展開の過程では、体験型の施設としての実店舗や、国ごとに異なる好みに合わせ、味の変更なども考えられるという。
現在の田村氏の成功は、自身の才能に加え、厳しい修行と研鑽の積み重ねによって得られたところも大きいだろう。食の業界から、そうした物事を追求するうえでの厳しさをなくしていくということは難しい。しかし氏の活躍は1つの新しい風となり、若手の夢を育てる土壌をつくってくれそうだ。
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