花粉症のある方は、目や鼻の粘膜で肥満細胞と呼ばれる細胞が花粉と反応しやすくなってしまっており、目や鼻に花粉が入った途端に(15分ほどで)、花粉は肥満細胞とくっつき、肥満細胞はヒスタミンという物質を分泌します。
このヒスタミンなどの化学物質がかゆみを起こし、分泌物を増やしたり、血管を拡張する作用があるため、鼻水が出たり、目が赤くなったりかゆくなったりします。
鼻水の一部は後方の喉の方へ垂れ込むこともあり、それにより咳を生じさせるため、初めて経験した方や感染症流行期には、風邪などと見分けが難しいこともあります。
このようなメカニズムを考えると、予防や治療の方法を紐解くことができます。すなわち、予防のためにはそもそも花粉を体内に入れないこと、そして肥満細胞が働かないようにすることが重要そうです。
また治療には、肥満細胞の働きを抑える薬、ヒスタミンという物質の働きを抑える薬が効きそうです。
花粉症治療、何が最も有効なのか?
それでは、治療についてはどうしたらいいでしょうか。
花粉症の治療には、飲み薬による全身治療、目薬や鼻スプレーなどによる局所治療があります。
治療薬の比較試験というのは国内でも多数行われていますが、多くの試験に製薬企業が色濃く介入しており、必ずしも標準化されていない質問票を評価方法に用いていたり、十分に偏り(バイアス)を取り除く努力をされていなかったりする試験も多く、良質なエビデンスが構築されているとは言いがたい現状があります。このため、特定の薬剤を公正に勧めるのは難しいと感じています。
ただし、もしあなたの症状が鼻の症状、目の症状、どちらか一方に限られるのであれば、アレルギー性の炎症を抑えるステロイドの鼻スプレーや抗ヒスタミンの目薬による局所治療が最も有効で、副作用の少ない治療です。
とくに、アレルギー性鼻炎の患者さんに対しては、ステロイドの鼻スプレー薬と抗ヒスタミンの飲み薬を比較して、鼻スプレーのほうが効果、安全性ともに優れていたと示唆する報告が多数あります。
通常、数時間のうちに効果が出始めますが、治療開始までに比較的長期にわたって症状があった方の場合には、効果が最大限得られるまでに数日から週単位で時間がかかることも報告されています。ですから、「この薬は効かない」と言ってすぐに諦めないことが重要です。
また、同じ鼻スプレーでも、血管収縮薬の鼻スプレーは、短期的効果はあっても長期的には逆効果であることが示唆されています。連用すると、3~7日間でリバウンド現象が起き、かえって鼻症状が悪化してしまうのです。なんでもかんでも鼻スプレーをすればいいというものでもありません。
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