活発な議論の会議がロクな結論にならない理由 人の顔が気になり「金言」が埋もれる結果に

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ガロルド・ステイサーとウィリアム・タイタスという2人の教授が、ミーティングでの情報共有に関する実験を行いました。2人は被験者を集めると、それぞれの被験者にミーティングで必要になる情報を与えます。すべての被験者が与えられる情報もあれば、特定の被験者しか与えられない情報もあります。

この実験のミソは、「それぞれの被験者がミーティングの席で『自分しか知らない情報』を提供すると、理想的な決断につながる」という点です。そして、被験者が知っている情報を出さずにいると、間違った決断につながります。

実験では、こんな状況を用います。

ある委員会のメンバーを選ぶためのミーティングで、候補者は2人に絞られているという状況です。すでに詳細な面接を行い、経歴のチェックも済んでいます。候補者2人の名前は、仮に「ミズ・ゴールド」と「ミズ・テイク」とします。

出席者の全員が、事前に自分だけに与えられた情報をミーティングの場で発表すれば、ミズ・ゴールドのほうがはるかに優れていることが明確にわかります。しかし、全員が知っている情報だけで判断すると、ミズ・テイクのほうが採用するにふさわしいという結論になってしまいます。ミズ・ゴールドの優れた点を知っているのは、その情報を与えられた一部の出席者だけで、その情報が表に出てこないと、正しい決断ができなくなる、というわけです。

優秀なミズ・ゴールドの採用率は…

このような実験を65回行ったところ、ミーティングで理想的な決断に到達できるのは全体の20%以下という結果になりました。つまり、8割以上の確率でミズ・テイクのほうが採用されるということです。

共通していたのは「出席者は全員が知っている情報しか出さない」ということでした。自分しか知らない情報は、たとえ議題と大きな関係があってもミーティングの場で発表されることはありません。

考えられる要因としては、ほかの人も知っている情報を提供すると、当然ながらほかの人から「それは正しい」と承認してもらえるからだと思われます。一方で、特定の人しか知らない情報は、周囲を驚かせ、場の空気をかき乱します。人間の同調意識が、「集団の意見に流されることなく、まっとうな反論が埋もれずに出る」ことを妨げているのです。

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