都内の有名私大を卒業後、民間会社に就職
双極性障害――。本連載でも何人か、この病気を抱えた人に登場してもらった。記事掲載後にトラブルになった人も少なからずいる。彼らの言葉をどう受け止めればよいのか、どの程度の距離感が適切なのか。私にとっては、発達障害やうつ病、パニック障害などと比べても、取材が難しいと感じることがままあった。
障害者雇用枠の契約社員として働くユウイチさん(仮名、47歳)は十数年前、上司のパワハラが原因でうつ病になり、その後、双極性障害と診断されたという。うまく話を聞けるだろうか――。喫茶店で落ち合ったとき、少し緊張していた私に対し、ユウイチさんはこう言ってくれた。
「病気が病気なので、異常に饒舌になることがあります。そういうときは、そちらから話を止めてくださいね。私のことをコントロールしてください。一応、伝えたいことを携帯(のメモ機能)にまとめてきたんですが、ちゃんと話せるかどうか……」
そうか、ユウイチさんも不安なのか。そう思うと、私の心も楽になった。
自営業の両親の下で育ったユウイチさんは東京都内の有名私大を卒業後、民間会社に就職した。すべてが順調だったが、あるとき、会社幹部による国会議員への不正献金が発覚。連日、新聞やテレビで報道される“現実”に嫌気がさし、転職を決意したという。
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