パワハラで障害者になった男性が前向きなワケ

そう状態で買い物をやめる事ができなかった

私には、ユウイチさんの職場での様子が目に浮かぶような気がした。多分、もともとの能力もあるから、任された仕事はすべて処理できてしまうのだろう。しかし、瞬間的なハイテンションの下で成果を上げた後は、必ずツケを払うことになる。加えて、いったんこなした“実績”があるだけに、周囲には「やればできるのにやらない人」と映ってしまう。

精神疾患はただでさえ、はた目にはわかりづらい。ユウイチさんも「『病気を言い訳にしている』とか、『さぼっているだけじゃないのか』ということは、今までさんざん言われてきました」という。

かかりつけ医が、ユウイチさんに時々「仕事量が異常に増える時期」があることに気が付いたのが数年前のこと。このとき、あらためて双極性障害と診断されたという。

双極性障害は、うつ状態とそう状態を繰り返す精神疾患の1つ。以前、取材で会ったある当時者はそう状態のときは「自分は何でもできるという自信と万能感にあふれています」と言っていた。

そう状態のときは、ユウイチさんは買い物がやめられなかったという(筆者撮影)

このため、そう状態のときに会社を興したり、買い物やギャンブルに貯えをつぎ込んだり、不特定多数の人と性行為をしたりといった行動にはしりがちだという。結局は失敗することがほとんどで、私が取材する限り、その過程で失業したり、人間関係が破綻したりといった人は少なくない。

ユウイチさんもこの間、買い物をやめることができず、車とローンで購入したマンションを手放した。離婚も経験した。残ったのは約450万円の借金だという。

「収入は減っていくのに、ネットで趣味の本などを買うことをやめられませんでした。多いときは月11、12万円は使っていたでしょうか。

仕事をどんどん引き受けてしまったのも病気のせいだったと思います。元妻からは『転職ばかりでは困る』と言われたことも、泣かれたこともあります。うつ状態の私を見ていることしかできなかった元妻はつらかったと思います。どこかに一緒に行ったり、何かを買ってあげたりした記憶がないんです。結婚生活を思い出したとき、思い出すことが何もないんです。申し訳ないという気持ちしかありません」

救ってくれたのは、高校時代の恩師や友人たち

双極性障害と診断された後は、毎月約11万円の障害年金の支給を受けるようになったほか、仕事が見つからなかった一時期は、生活保護を利用したこともあった。

双極性障害は自殺リスクが高いともいわれる。ユウイチさんも一時は首吊り用のロープを購入、人気の少ない公園に目星をつけ、決行する日時まで決めたこともあった。思い詰めていたユウイチさんを救ってくれたのは、高校時代の恩師や友人たち。話を聞いたり、知り合いが管理する無料低額宿泊所を紹介するなどしてくれたという。そうした支えのおかげもあり、1年前、ユウイチさんは初めて障害者雇用枠での就職をした。

福祉制度の利用や障害者としての就職活動を振り返り、ユウイチさんは次のように語る。

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