「正社員にする詐欺」と憤る男性が受けた仕打ち もらえたという「ボーナス」は5000円だった

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40代で介護職員になったセイジさん。業界に身を置いたのは3年足らずだが、違法な働かせ方が横行する実態に驚いたという(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「今月、転職に成功し、かろうじて財政再建の目処がつきましたが、求人詐欺に遭い騙され続けた介護業界の劣悪待遇をお話ししたいと思ってます」と編集部にメールをくれた、47歳の男性だ。

「求人詐欺、『正社員にするする』詐欺、生活保護と変わらない低賃金――!」

そう憤るのは、40代半ばで介護業界に転職したセイジさん(仮名、47歳)。自ら経験した劣悪待遇についてぜひ話を聞いてほしい、と続けた。

試用期間を延長され続け、正社員になれない

セイジさんは3年前、ハローワークで「雇用形態 正社員、賃金 17万~28万円」と書かれた求人票を見て、早速ある高齢者施設の面接を受けた。その場で採用が決まったものの、出勤初日「最初の3カ月は試用期間。その間は時給制です」と告げられた。

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時給は950円。月収は17万円に届かない。正社員にはあると言われた住宅手当や家族手当もなし。さらに3カ月が過ぎると、試用期間を延長すると言われ、その後もさまざまな口実でもって正社員化の約束を反故にされた。

実際の待遇が求人票の内容と違う“求人詐欺”。「話が違うと思いました。でも、少しでも早く仕事を見つける必要があったので、(条件に)応じざるをえませんでした」。

試用期間を延長されるたびに「車いすのブレーキをかけるとき、目視確認をしていない」「(入居者の)体の下に敷くタオルのしわを伸ばしていない」などと指摘されたという。しかし、セイジさんに言わせると、「ブレーキ確認を怠ったことについては身に覚えがありません。タオルのしわは、逆に完璧にできている職員なんていませんよ。(人件費がかかる)正社員にしないための揚げ足取りとしか思えませんでした」。

また、セイジさんには夜勤はなかったが、施設では夜勤明けを休日にあてる勤務ダイヤを組んでいたという。夜勤は21時から翌朝7時まで。労働基準法では休日は暦日(0時―24時)を基準としており、夜勤明けを休日とみなすことは原則違法である。職場は週休2日だったが、そのうちの1日は夜勤明けで、まともに休めるのは1日だけだった。

「体はしんどいけど、みんな夜勤をやりたがるんです。だって夜勤手当がないと生活できませんから。私も夜勤を希望しましたが、(新人だったので)入れてもらえませんでした」

ボーナスは出たという。しかしセイジさんはこう言って切り捨てる。「施設の偉い人が忘年会で『皆さんにプライドを持って働いてほしいので、うちは非正規にもボーナスを出します』とあいさつしてました。でも、いくらだと思います? たったの5000円ですよ」。

1年後、セイジさんはこの施設を退職。最後まで正社員にはなれなかった。

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