J1初年度に意外な健闘、「ファジアーノ岡山」を支える"ゴールドマン流"経営術が併せ持つ《愚直さ》と《懐の深さ》

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ファジアーノ岡山
昇格チーム同士の一戦となった3月の清水エスパルス戦で同点ゴールを決めた木村太哉選手(右、写真:アフロスポーツ)
2025年にサッカーJ1リーグに初参戦したファジアーノ岡山。進境著しいこのクラブで2006年から2018年まで社長を務め、経営面の陣頭指揮を執ってきた木村正明氏。Jリーグ専務理事を経たのち、現在は東京大学先端科学技術研究センター特任教授を務めながら、愛するクラブの後方支援に回っている。
その木村氏が4月に上梓したのが『スポーツチームの経営・収入獲得マニュアル』(同文舘出版)だ。同書の中には、岡山やJリーグ専務理事として取り組んだ観客作りやスポンサー営業、グッズ販売、企業価値拡大についての貴重なエッセンスが盛り込まれている。
首都圏と地方都市の経済格差が広がるなか、この先の展望をどう描こうとしているのか。近著での分析も踏まえながら、革新派オーナーのビジョンを前後編に分けて掘り下げる。
前編:「Jリーグクラブ経営にまつわる"常識"は間違いだらけ」、元リーグ幹部の最新分析で見えてきた《リアルサカつく》の真実
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金融機関と共通する営業の根幹部分

岡山と関わりを持つ前は金融大手のゴールドマン・サックスで活躍していた木村オーナー。1993年に入社し、債券部長などを経て、2003年にはマネージングディレクター(執行役員)に就任。同年就任の役員の中では最年少という異例の出世を遂げた。

辣腕を振るったゴールドマン時代の経験が岡山のクラブ経営に生かされた部分はあるのか。それを本人に聞いてみると、少し考えながら、こう語り始めた。

「当時はメガバンクや生命保険会社の方々と仕事をしていたので、地方都市のオーナー企業を相手に話をしている今とは、向き合う人々が違いました。ただ、きちんと情報収集をして、顧客にアプローチするといったスタンスは通じるところがある。ゴールドマン時代に培った部分は生きていると思います。

当時はモルガン・スタンレーとかドイツ銀行、メリルリンチといった強烈なライバルがいて、顧客からは1社しか選ばれないので、調査の質が全然違いました。さらに、当時のゴールドマンはパートナーシップの会社で、役員が自分のお金を持ち出しあって運用していたので、市況を読み間違えると自分の資産が吹き飛ぶという厳しい環境。だからこそ、情報収集と分析の厳しさはなかなかのものでした。それをサッカー界に転身した後も忘れずにやっているのは確かです」(木村氏)

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