J1初年度に意外な健闘、「ファジアーノ岡山」を支える"ゴールドマン流"経営術が併せ持つ《愚直さ》と《懐の深さ》
スポンサーへ営業するに当たって、相手の会社の業績や営業内容、社長など役員のバックグラウンドをチェックするのは当然のこと。スポーツへの関心や向き合い方など、可能な限りの情報を集めて、それをたたき込んでアプローチするのが”木村流”なのだろう。

「ご存じのように、野球もサッカーも親会社がついているケースが多くを占めています。サッカーの親会社からの拠出金について、毎年独自で調査していました。そういうクラブトップはたぶん自分だけだったんじゃないかと感じます。これからアプローチしようという企業に関しても、もちろん妥協せずに調査させていただきます。ウチの社員は岡山のほとんどの企業の社長の名前や経歴を覚えています。新卒1年目の社員も当たり前にやっていますし、勉強することが当然の環境になっています。今では僕より詳しいんじゃないかなと思うくらいです。
そういうスタッフは、最初は押し出しが弱かったとしても、スポンサーを獲得できるまで何年も通い続ける粘り強さを持ち合わせている。もちろんサッカークラブですから、勝たなきゃいけないし、いい選手を連れてこないといけないんですが、プロの世界である以上、フロントも他チームとの競争。岡山のスタッフは前向きなマインドを持っていると認識しています」(木村氏)
地元にライバルがいたから強くなれた
敏腕経営者の下で鍛えられたことで、岡山はJ1に昇格できるクラブ力を身に付けたと言ってもいいのではないか。スポンサーに対しては、これまでは”地元重視”という考え方を貫いてきた。岡山のスポンサーは9割以上が県内企業という構成だ。
「地域によってクラブ事情はまちまちですが、そのクラブがホームタウンを移さなければ、30年かければ全部の企業に当たれると考えているんです。岡山は私が創業してからもうすぐ20年が経ちますが、岡山市においては8割くらいはアプローチさせていただいたという感触を持っています。
年商30億円以上の企業のトップにスタッフがほぼ会えていますし、さまざまな形でご協力いただいています。今後はそれ以外と県内全域、さらに東京や大阪に広げていくということになると思いますが、離脱企業もあるので、再アプローチも重要です。余白を埋めていく作業を地道にコツコツやっていくことが肝心なんです」(木村氏)
同じ岡山県内にはSVリーグ・ウーマンの岡山シーガルズ、なでしこリーグ1部の岡山湯郷Belleという2つのスポーツクラブがあり、木村氏が岡山に関わり始めた20年前は認知度に差があった。
岡山シーガルズにはかつて元日本代表の栗原恵さんや宮下遥さんが在籍。湯郷にもなでしこジャパンで一世を風靡した宮間あやさん、福元美穂といった2011年女子ワールドカップ制覇、2012年ロンドン五輪銀メダルのメンバーがいて、全国的にも知名度が高かった。
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