J1初年度に意外な健闘、「ファジアーノ岡山」を支える"ゴールドマン流"経営術が併せ持つ《愚直さ》と《懐の深さ》

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そういう存在があるので、ファジアーノ岡山がスポンサー営業に回っても色よい返事をもらえないことも多い。そういうときこそ、木村氏のゴールドマン魂がモノを言った。

「スポーツチームは同志でもありライバル。ライバルはいたほうがいいと思います。Jリーグ専務理事時代、多くの地方都市を見てきましたが、ビール会社の居酒屋参入をめぐる争いはすさまじいですし、テレビ局のスポンサーの取り合いも熾烈なバトルがあります。スポーツチームは増えてきたので、似たような状況が各地で発生しています。

競争があってこそ企業もクラブも成長すると思うし、以前は同じ県内にほかのJクラブがあってもいいと考えたこともありました。岡山県も地域によってライバル意識がありますし、市場開拓をすることで、さらに伸びるかもしれないと思ったので」(木村氏)

実際、1つの都道府県に複数クラブが存在するところはある。大都市圏の神奈川、埼玉、千葉、大阪、サッカーどころの静岡はもちろんだが、人口の少ない愛媛にFC今治と愛媛FCがあったり、サッカー後発地域だった長野に松本山雅と長野パルセイロが生まれるなど、可能性は確かにありそうだ。

「地域と一緒に大きくしていく」

「クラブ経営をするうえで大切なのは、本当に1つひとつの企業を丁寧に当たっていけるか。そこに尽きます。『あの社長さんは野球好きだから』『小規模企業がスポンサーになってくれる可能性は少ない』などと言い訳をしていたら、先には進まないんです。

スポーツ業界にいるとお金の話は覆い隠されがちですけど、Jリーグの野々村芳和チェアマンも札幌の社長時代に言っていたように、やっぱりお金が要るのは事実。お金があってこそ勝てますし、それ相応の金額が必要だということを堂々と発信していくべきです。それを地域の関係者と共有し、クラブを一緒に大きくしていく方向に持っていければ、確実に前進するのではないかと感じています」(木村氏)

J1昇格プレーオフ決勝を制した2024年の岡山は売上高20億3600万円を記録。スポンサー収入も9億1000万円で、いずれも過去最高の数字を記録した。それがJ1昇格によって、2025年は売上高35億円を超え、前年比で2倍近くになる見通しだ。

その水準を維持し、さらに引き上げていくことができれば、岡山は必ずJ1定着を果たせるはず。木村氏の”ゴールドマン魂”はクラブの力強いベースになっている。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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