シングル母は「介護業界」にズタズタにされた

「唯一正社員で働ける業界」のはずが…

篠崎千尋さん(46歳、仮名)は給与不払いと心の病に苦しんでいる(写真:編集部)
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。今回紹介するのは、介護業界を渡り歩いてきた、東京多摩地区の団地で暮らすシングルマザーだ。

 

この連載の一覧はこちら

東京多摩地区のベッドタウン。駅からバスで坂道を上ると、大きな団地群が見える。篠崎千尋さん(46歳、仮名)はシングルマザー、一角にある団地の最上階で家族と暮らす。決して狭くはない2DK。笑顔で部屋に迎えてくれたが、表情は若干引きつり、正常な状態ではないことはすぐにわかった。

さっそくDV体質だった元夫が暴れて空けた壁と冷蔵庫の穴、勤めている介護事業所からの給与不払いを宣言する内容証明、重度ストレス反応と書かれた診断書を見せてくれる。貧困に加えて、さまざまな不穏が重なって追いつめられた状態だった。整理して順番に話を聞くことにする。

「子どもの年玉を使ってから出直せ」

「先月1月10日まで東京都世田谷区の訪問介護に勤めていました。で、1月25日に給与が支払われなかった。催促したら給与を払わないって。おカネは本当にギリギリ、ずっと綱渡りみたいな生活なのでパニックです。それに重度ストレス反応って診断も出て、働くことはしばらく止められています。仮に今から仕事を探しても、どうしても今月と来月の生活は乗り切れない」

つい1週間前。わらにもすがる思いで、生活保護の申請のために福祉事務所に行っている。

「たまたま4カ月分の児童育成手当が出たばかりでした。“育成手当、それに子どものお年玉も、全部使ってから出直すように”と追い返されました」

現在、収入は児童扶養手当月5万2330円と児童手当月2万円、児童育成手当月2万7000円。それに元夫からの養育費6万円。合わせて15万9330円。それに、手取り月12万円ほどの給与を予定していた。介護事業所の通告によって突然12万円が入ってこなくなり、一家は混乱状態になっていた。当たり前だが、給与の不払いは完全に違法である。

「本当にどうしていいか、わかりません。いろいろなことが、あまりにひどすぎます」

次ページ不正する介護事業所に、税金が垂れ流される
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • 最新の週刊東洋経済
  • 見過ごされる若者の貧困
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
トレンドライブラリーAD
人気の動画
早慶上理・MARCH・関関同立、少子化でどうなる?
早慶上理・MARCH・関関同立、少子化でどうなる?
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日米の躍進銘柄を総まくり<br>発掘! 未来の成長企業

米国の株式相場上昇に目を奪われがちですが、日本でも未来を牽引する成長企業は確実に育っています。本特集では「新興成長企業」や「トップの通信簿」などのランキングを掲載。GAFAMやメルカリの次の新主役を探しましょう。

東洋経済education×ICT