シングル母は「介護業界」にズタズタにされた 「唯一正社員で働ける業界」のはずが…

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「なぜか私に暴力を振るいだした。子どもが“暴力はダメだよ”って夫に言った瞬間、沸騰して、子どもの髪の毛を引っ張って引きずりまわした。このタンスにガタガタ、ガタガタ頭をぶつけて、私がかぶさってかばっても暴力をやめない。子どもが警察に電話したら“てめえ、俺を警察に売りやがったな”って発狂して連続キック。でも最終的に、ベランダで泣いているんですよ。俺のことをわかってもらえないって」

夫のDVは、やがて保育園に行くようになった子へ向かった。子への暴力が止まらなくなり、そして彼女の精神状態もだんだんとおかしくなる。恐怖に支配されて、不眠が始まる。言葉使いやささいな仕草、家族の何かが気に食わないと、すぐに怒鳴って暴れた。

「子どもは保育園から小学校1年生まで、本当にずっと暴力をふるわれた。夫は体が大きくて、子どもを平気でフルスイングで殴る。殺される寸前みたいなことも何度もあった。理由は本当にささいなこと。薬を飲まなかったからとか。子どもってかわいがってくれると、親に寄っていくじゃないですか。けど、かわいがっていたかと思うと、突然怒鳴りだして殴るんです」

2DKの壁は所々に穴がある。すべて夫が暴れたときにできたものだ。夫は不貞行為が妻にバレた後も、職場でハメ撮り写真を収集、不貞行為ざんまいで、家に帰ると妻と子への暴力で気を晴らした。数年間、手に負えない状態が続いた。

離婚を申し出て、2年前に成立。夫はこの団地の部屋を出ていき、現在は隣の市のアパートで独り暮らしをする。離婚後、篠崎さんと2人の子は夫には会っていない。毎月6万円の養育費は、今のところ月末には振り込まれている。

殴られなくなると不安になる

暴力を振るう夫、父親がいなくなってから、さらなる不幸が始まった。子の様子がおかしくなり、不安定な状態になった。小学校でクラスメートとのケンカやトラブルが絶えなくなり、親からの苦情が殺到して、篠崎さんは現在進行形で学校に何度も呼び出されている。

「DVをされている間は、恐怖で支配されている。それがなくなると、逆に不安になる。悲惨な生活から平穏になって、なにかポッカリ穴が開いたような。私も似たような感覚がある。だから、子どものことがわかる。怒鳴られようがひっぱたかれようが、子どもにとっては、それが普通の生活だった。“殴られることはないんだよ”って環境になった途端、本当に不安になる。先生から頻繁に電話がかかってくるようになったのは、離婚してからすぐ。子どもはDVの影響で、人の気持ちがわからない。やり過ぎちゃう」

トラブルが頻繁に続き、副校長から「DVを受けた子どもは、将来的に性犯罪者になる確率が高い」とまで言われた。児童相談所に行け、特別学級がある学校に転校してほしいなど、学校はもうお手上げといった状態のようだ。

「テスト用紙にバカとか死ねとか書くとか。先生にひたすら暴言を吐くとか、そんな状態みたいです。私も精神科に行ったら、重度ストレス反応って診断。DVの影響で眠れなくなったことが原因で、子どもだけでなく、私もいろんな人とトラブルが絶えない。人間関係がうまくいかなくて。人のせいにしてはいけないけど……」

小学校の先生たちの辛辣な言葉は、彼女自身が先生との人間関係が悪化した末の状態のようだった。

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