元TBS・58歳新人監督の「映画」が気づかせる幸せ

55歳で未開地へ飛び込んだ男を支える縁と信念

その玉井が80歳近くになって「人生最後の大仕事」として選んだのがアフリカである。世界最貧国群と言われているサブサハラ(サハラ砂漠以南)49カ国の各国から、毎年1国1名ずつ優秀な遺児を選出し、先進国の大学で学ばせ、母国のさまざまな分野で活躍するリーダーを育てようという教育支援プロジェクト「アフリカ遺児高等教育100年構想」を描いた。

この構想が具体的に進めば、教育を受けた若きリーダーたちが母国に帰り、より民主的な国づくりに参加することによって、その国の国民所得や教育水準が上がり、やがては目先の食糧支援や物品支援以上に、貧国の連鎖を断ち切ることに貢献できる。

各国から選ばれた有力者、「賢人」メンバーは続々と決まっており、現在は49カ国のうち44カ国、176人まで選出しているという。毎年約50人近いリーダー候補が生まれ、10年20年経つと大きな力となるだろう。国を変えるのは人の力。玉井は日本で実践してきたことをアフリカでもやろうとしている。日本にとどまらず世界を見据えた壮大な社会貢献活動と言えるだろう。

「アフリカ支援ならイチから資金を集めるべし」

一方、あしなが育英会の中では意見が二分していたという。

「東日本大震災後、日本国内にもこんなに困っている子どもがいるのに、なぜアフリカなのか」「あしなが育英会に集まった募金は日本の子どもたちのための寄付なのに、アフリカの子どもたちに使うのは違う」「アフリカを支援するなら別ルートでイチから資金を集めるべし」――。

玉井の「アフリカ遺児高等教育100年構想」にはこうした異論が投げかけられた。そこで行き着いたのが、世界中のメディアが注目するようなイベントを仕掛け、ニュース化させて、関心を持つきっかけをつくることだった。玉井の「あしなが運動」は女優やスポーツ選手など誰もが知るアイコンに協力を求めて街頭募金に立ち、そこにメディアを集めて訴えることで認知を獲得してきた歴史がある。

篠田は玉井の「あしなが運動」に長年関わってきた(撮影:東洋経済オンライン編集部)

そこでメディア業界に長く身を置き、映像のプロフェッショナルである篠田に白羽の矢が立てられた。実は玉井と篠田には30年以上もの付き合いがある。篠田は学生時代、玉井が創設した「ブラジルで働きながら学ぶ」という留学制度に応募し、ブラジルの商都サンパウロの自動車部品会社で「研修生」として最低給料をもらいながら、ブラジル人と1年間喜怒哀楽を共にした経験があった。退屈な学生生活に飽き飽きしていた篠田にとって、その後の人生にもつながる原体験だった。

帰国後、篠田は高校時代に映画を撮っていた経験から、映像を通して「伝える」仕事を選び、テレビ局に入社。以後も、何かと玉井からは声がかかり、濃い師弟関係の中で篠田は「あしなが運動」のボランティアとして関わってきた。

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